クールな氷の王子は無自覚地味子を独占したい

熱気に包まれていた体育祭が終わり、校庭には夕陽のオレンジ色が長く影を落としていた。

狂乱のような大歓声が嘘のように消え去り、静まり返ったグラウンド。生徒たちがそれぞれの教室へ引き揚げていく中、実行委員である私と冴くんは、残された用具の片付け作業に追われていた。

「う〜、腰が重い……」

パイプ椅子を数脚まとめて抱え、本部テントのあった場所と用具倉庫を何度も往復する。
リレーで全力を出し切った脚が、いまになってじんじんと心地よい疲労感を訴えていた。汗で貼りついた前髪を手背で払いながら、私は思わず小さく息を吐く。

でも……すごく楽しかったな

いつもなら目立たないように、誰の記憶にも残らないようにひっそりと過ごしていた学校生活。
だけど今日は、バトンを繋いで、みんなと一緒に笑って、葵やゆいに思い切り褒めてもらえた。

「おい、無理すんな」

不意に上から低い声が降ってきたかと思うと、私の腕から数脚のパイプ椅子がひょいっと取り上げられた。

「あ……氷室くん」

見上げると、眉間に少しシワを寄せた冴くんが、私が持っていた倍以上のパイプ椅子を片手で軽々と持ち上げている。黒髪の隙間から覗く横顔が、夕陽に照らされて綺麗に輪郭を浮かび上がらせていた。