クールな氷の王子は無自覚地味子を独占したい

「一ノ瀬ーーーっ! 頼んだぞーーーーっ!!」

「はいっ……!!」

第三走者の男子が、必死の形相でバトンを突き出してきた。
バシッ! と手のひらに強い衝撃が走り、確かな重みを受け取った瞬間。

私の頭の中で、カチッとスイッチが切り替わった。

グラウンドの固い土を、一歩目から強く力任せに蹴り飛ばす。
一瞬でトップスピードに乗った私の身体は、弾丸のように前方へ跳ね出した。

風を切る音が、耳元でゴーッと鳴り響く。

「……えっ!?」
「ハ、ハイ!? なにアイツ、バカ速いんだけど!?」

周囲のどよめきが、一気に炸裂した。
前を走っていた他クラスの選手たちの背中が、みるみるうちに近づいてくる。
コーナーのカーブを利用して、内側から鮮やかに一人、また一人と抜き去っていく。

走る風圧で重い前髪が大きく捲れ上がり、汗が空中に散った。
メガネの奥で視界がクリアに広がっていく。

いける……抜ける……!

最後のストレート。ダントツでトップを走っていたA組のエース男子生徒の横を、私は風のように一気に置き去りにし、真っ白なゴールテープへと飛び込んだ。

「やっ……たぁぁぁぁっ!!」

『ゴ、ゴールイン―――っ!! 優勝はなんと、土壇場の激走を見せたB組、一ノ瀬選手だ―――っ!!』

実況の興奮した叫び声がスピーカーから響き渡り、グラウンド全体が地鳴りのような大歓声に包まれた。