クールな氷の王子は無自覚地味子を独占したい

2月14日、放課後。
いつもより少し静かな階段の踊り場で、私は緊張で跳ねる心臓を押さえながら冴くんを待っていた。
バッグの中には、今朝早起きして丁寧にラッピングしたガトーショコラが入っている。

「……待たせたか?」

足音がして振り返ると、冴くんが立っていた。
いつも通りのクールな表情だけど、心なしか耳の先端がほんのり赤い。

「ううん、全然待ってないよ。冴くん、怪我の完治報告書類出しに職員室寄ってたんでしょ? お疲れ様」

「ああ……」

冴くんはポケットに手を突っ込んだまま私に歩み寄り、少しだけ探るような視線を送ってきた。

(……よし、頑張れ私……!)

ぎゅっと拳を握りしめてから、バッグからリボンのかかった小さな箱を取り出し、両手で冴くんに差し出した。

「冴くん、これ……! バレンタインのチョコ。あんまり上手じゃないけど……」

「っ……!?」

冴くんは息を飲み、差し出された箱と私の顔を交互に見つめた。
固まったまま数秒。やがて、震える手でゆっくりと箱を受け取ると、愛おしそうにそれを抱え込んだ。

「……手作り、なのか……?」

「うん。甘さ控えめにしたから、お口に合うといいんだけど……」