クールな氷の王子は無自覚地味子を独占したい

「歌うわけねぇだろ。消せ」

「いいから歌えって! 冴の歌声久々に聴きたいんだよ! な、みんなも聴きたいよな!?」

結城くんが周囲を巻き込んで手拍子を始めると、クラスの男子たちも「冴歌えー!」と悪ノリで盛り上がり始める。

氷室くんは「ハァ……マジでウザい」と心底鬱陶しそうに眉をひそめ、舌打ちを一つ。
だが、周りの手拍子が収まらないと悟ると、面倒くさそうに溜息をつきながらマイクを口元に寄せた。

曲の前奏が終わり、氷室くんが低く静かな声をマイクに乗せる。

「――――……」

その瞬間、ざわついていた部屋が一気に静まり返った。

低いのにどこか通る、少し掠れた色気のある歌声。
普段の冷たい話し声とは全く違う、圧倒的な歌唱力に、葵も煌月ちゃんも目を丸くして聴き入っている。

当の氷室くんは、画面すらろくに見ず、だるそうに片手でマイクを持って一番だけを歌い切ると、すぐにマイクをテーブルに放り投げた。

「終わり。二度と入れんな」

「うおおお! 冴うますぎだろ!!」と盛り上がる結城くんたちを横目に、氷室くんはフイッと視線を逸らし、ジュースのグラスに口を付けたのだった――。