【電子書籍化記念SS】あなたの傷痕にキスを〜有能なホテル支配人は彼女とベビーを囲い込む〜

 校門のところで隠岐夫妻と別れた。

 自然、慎吾と手を繋ぐ。
 車の前で里穂は立ち止まった。

「里穂?」
「私ね……、初恋って『おにいちゃん』だったよ」

 火事のなかから救い出してくれた、宿泊客だった少年。
 故郷を追い出され、両親を亡くし、辛い境遇だったが、『おにいちゃん』が助けてくれた命だから懸命に生きようと思った。

 慎吾が自分を凝視する。
 里穂も彼から目を離さない。

「慎吾に逢うまで、『おにいちゃん』が心の支えだったの」

 慎吾は固まっている。

『おにいちゃん』は慎吾だった。
 告白してしまったが、重いとひかれるだろうか。

 慎吾はふんわりと笑った。

「最高だ」

 抱き寄せられて、耳を喰まれた。

「俺がおまえの最初の男で、最後の男か」

 熱い息と言葉を耳穴に吹きこまれ、腰にキた。
 脚から力が抜けそうになると、慎吾に抱きかかえられる。

「離さないからな、覚えておけよ」

 里穂はこくこくと頷く。

「離さないで」