【電子書籍化記念SS】あなたの傷痕にキスを〜有能なホテル支配人は彼女とベビーを囲い込む〜

 文化祭よりは、各界で活躍する著名人OBをお招きするための研究発表会なのだという。
  受験勉強をするから宿題はないが、七月から八月にかけてを準備期間にして行う。 

 歴史学者を招くクラスは、歴史書から再現した料理屋を。
 光学研究会はプリズム迷路を校庭に作った。

 eスポーツ選手を招いたクラスは、自作のソフトを使ったゲーム大会をパソコンルームで開催している。

 音楽室では、パーカッショニストとサックスプレイヤーの飛び入りセッション。

 某日本アカデミー主演女優賞を受賞した女優は、教室を使った演劇を鑑賞中だという。

 「現役生が一流人の凄さに触発されるようになるため」という狙いがあるのですって」

 慎吾と隠岐CEOも毎年、なにかしらの研究会に招かれてはディスカッションに参加しているらしい。

 ひかるがふふふ、と笑う。

「護孝さん、『高校生って柔軟でいいな!』って毎年目をキラキラさせているの」

 卒業生たちにとっても、自分と同じ道を歩もうとする後輩たちとの交流は刺激的らしい。

 また、受験する三年生たちも『息抜き』と称して個人や有志で参加する者も多いという。 

 著名人の招聘、予算の管理、スポンサーとの交渉。
 それらは全て学生たちの手に委ねられている。

「すごい……」

 里穂は目を丸くした。
 想像していた文化祭とは、まるっきり違う。

「里穂、こっち」

 慎吾が里穂の手を握りながら、屋台で出されているものを買い食いする。

 たしかに、朝食をしっかり食べていたら、あまり味わえなかったかもしれない。

 隣に制服を着た慎吾がいて、自分も彼と同じ学校の制服を着ている。
 ほんとうに同級生になったようで、里穂はあちこちを見回りながら、はしゃいだ。