大学へ着き、講義室へ向かっていると、後ろから田中に呼ばれた。
「夏樹。」
「おはよ。」
「……何それ。」
田中の視線が、俺の手元で止まった。
「花。」
「それは見れば分かる。」
隣にいた小川も、花束を見た。
「誰かにもらった?」
「俺が買った。」
「……お前が?」
田中がぎょっとした。
「何、その顔。」
「いや、お前が花屋で花を買ってるところ、想像できなくて。」
「俺もできなかった。」
「じゃあ、なんで買ったんだよ。」
「凛ちゃんにあげようと思って。」
田中が黙った。
小川も黙った。
「何?」
「……冬城さんに?」
「うん。」
「なんで?」
「似てたから。」
田中がさらに変な顔をした。
「花が?」
「凛ちゃんに。」
「…………。」
「だから何だよ。」
小川が俺を見た。
「お前、それ初めて?」
「何が?」
「女に花買うの。」
「たぶん。」
小川はしばらく俺を見たあと、
「ふーん。」
と言った。
「何だよ、その言い方。」
「別に。」
絶対なんか思ってるだろ。



