帰りの電車。
俺は凛の隣に座っていた。
向かいには美奈と田中たちが座って楽しそうに話していた。
「疲れた?」
俺が聞くと、凛は少しだけ目を細めた。
「少し。」
「川ではしゃいでたもんな。」
「はしゃいでいません。」
「めっちゃ水かけてたじゃん。」
「美奈が先にやったので、仕返ししただけです。」
「楽しそうだった。」
「普通です。」
そう言いながら、凛が小さくあくびをした。
「眠い?」
「眠くありません。」
「今あくびしたじゃん。」
「していません。」
「したって。」
「…………。」
「凛ちゃん?」
返事がない。
横を見ると、凛は窓にもたれるように目を閉じていた。
「寝るの早。」
俺は小さく笑って、前を向いた。
しばらくして電車が揺れた。
こてん。
肩に何かが当たった。
「……え。」
見ると、凛が俺の肩にもたれていた。
完全に寝ていた。

「…………。」
女の子とこのくらい近くなることなんて、別に珍しくない。
なのに。
なんで俺、動けなくなってんだろ。
起こそうかと思って、凛を見る。
やっぱり起きる気配はない。
「……重。」
小さく呟く。
もちろん、全然重くない。
俺は少しだけ口元を緩めた。
「嘘。全然重くない。」
誰に言い訳してるんだ、俺。
そう思いながらも、俺は凛を起こさなかった。



