ノンデリ男の敗北  ~モテる俺が法学部女子に告白したら「私は好きではありません」と普通に振られた~

冬休み、凛を実家に連れていった。

玄関の前で、凛が手土産の紙袋を持ち直した。マフラーを外したあとも、なかなかインターホンへ目を向けない。

「緊張してる?」

「……うん。」

「大丈夫。俺の親だから。」

「それ、安心していいの?」

「どういう意味?」

凛が少し笑った。
秋に凛の家へ行ったときは、俺もこんな感じだった。そう思うと、緊張している姿までからかう気にはなれなかった。

扉を開けると、母親がすぐに顔を出した。

「いらっしゃい。凛ちゃん?」

「初めまして。冬城凛と申します。本日はお招きいただき、ありがとうございます。」

「こちらこそ。寒かったでしょう。入って。」

母親の視線が、一度も俺に向かない。

「息子も帰ってきたんだけど。」

「分かってるわよ。」

隣で凛が小さく吹き出した。

居間に入ると、父親まで普段より背筋を伸ばしていた。
凛が挨拶をして手土産を渡し、お茶が出る頃には、大学や春からの仕事の話になった。

俺の家で、凛が両親と話している。
見慣れた居間が、少し違って見えた。

「夏樹、余計なこと言って困らせてない?」

母親の一言で、そんな気分は吹き飛んだ。

「なんでそこから聞くんだよ。」

「昔から、思ったことをすぐ口にするでしょう。」

否定しづらいのが腹立つ。
凛は一度俺を見てから、湯呑みを置いた。

「びっくりすることは、あります。」

「そこは否定してくれてもよくない?」

「でも、嬉しいことも、ちゃんと言葉にしてくれるので。」

今度は、何も言えなかった。
母親がにやっと笑ったのを見て、俺はお茶を飲んだ。

そのあと、話はなぜか俺の子供時代に移った。
聞かせなくていい失敗談まで披露され、帰る頃には、凛と母親の間でアルバムを見る約束までできていた。

駅へ向かう途中、凛が白い息を吐いた。

「楽しかった。」

「俺は余計な話されて疲れた。」

「夏樹くん、小さい頃から変わらないんだね。」

「もうちょい成長してるだろ。」

「うん。お母さんも、そう言ってた。」

思わず隣を見ると、凛は楽しそうに笑っていた。

俺の知らないところで、どんな話をしていたのか。
気にはなったけど、次も来るつもりでいてくれることのほうが嬉しかった。