ノンデリ男の敗北  ~モテる俺が法学部女子に告白したら「私は好きではありません」と普通に振られた~

十月に入り、六人全員の就職先が決まっていた。

「これで、ようやく全員お祝いできるね。」

美奈がそう言って、ジュースのグラスを持ち上げた。
大学近くのファミレスに、料理の皿が並んだ。

「あと半年で社会人かあ。」

俺が呟くと、田中がポテトをつまんだ。

「その前に卒業な。」

「分かってるって。」

「凛ちゃん、こいつが遊び始めたら止めてやって。」

「卒業論文までは面倒を見られないよ。」

「そこは自力でやるから!」

隣の凛が小さく笑った。

「詩織たちは、働き始めてからも今くらい会えそう?」

美奈の問いに、詩織は小川と顔を見合わせた。

「まだ、配属先も勤務の様子も分からないから……。」

「最初は無理に予定詰めないでおこうって話してる。」

小川の答えに、俺は思わず口を挟んだ。

「でも、会いたくならね?」

「なるだろ。」

「なるんだ。」

「なんで意外そうなんだよ。」

詩織が、グラスに添えた指を少し動かした。

「会える日は、ちゃんと会いたいよね。」

「うん。休み分かったら教えて。俺も送る。」

「どっちかばかり移動するのも大変だから、場所もその都度決めよう。」

「仕事で疲れてたら、飯だけでもいいし。」

派手な約束はなかった。
それでも、二人が卒業後も一緒にいるつもりなのは、よく分かった。

そのとき、美奈がスマホを取り出した。

「そうだ、田中。昨日送ったやつ見た?」

「犬が階段下りられない動画?」

「それ。最後、見た?」

「飼い主に運ばれてたな。」

「そう! あの顔!」

美奈が声を立てて笑った。

「何、お前らそんなの送り合ってんの?」

俺が尋ねると、美奈はあっさり頷いた。

「面白かったから。田中、こういうの好きそうじゃん。」

「昨日はそれだけじゃなかったけどな。」

「あ、期間限定のプリンも送った。」

「店の地図までな。」

「だって、大学から近かったんだもん。」

前は、元彼のことで相談に乗ってもらっていたはずだった。
いつの間にか、用事とも言えないような連絡が増えていたらしい。

「じゃあ、帰り寄る?」

「え、いいの? 行く!」

田中は「どうせ駅の方だし」と言って、水を飲んだ。
俺が見ていることに気づくと、テーブルの下で軽く足を蹴ってきた。

まだ何も言ってねえだろ。