ノンデリ男の敗北  ~モテる俺が法学部女子に告白したら「私は好きではありません」と普通に振られた~

八月、内々定をもらった。

電話を切ってから、しばらくスマホを眺めていた。

……決まった。

実感が湧くより先に、凛に電話をかけていた。

「凛ちゃん、今大丈夫?」

「うん。どうしたの?」

「内々定もらった。」

一瞬の沈黙のあと、電話の向こうで息をのむ気配がした。

「本当? おめでとう、夏樹くん。」

その声を聞いた途端、ようやく肩の力が抜けた。

「うわ、めっちゃほっとした。」

「頑張ってたもんね。」

「面接の反省会、何回も付き合ってくれてありがと。」

「私は聞いてただけだよ。」

その、聞いてくれる相手がいることに、何度助けられたか。

「今度、お祝いしよう。」

「え、してくれんの?」

「うん。したい。」

俺はベッドに腰を下ろした。

こういうところだった。
凛は時々、こっちが何も言えなくなる言い方をした。

翌週、二人で駅前のイタリアンへ出かけた。

凛がお祝いだからとご馳走してくれて、そのあとは近くの店をぶらぶら見て回った。雑貨屋で変な顔の犬の置物を見つけると、凛はそれを俺の横に並べた。

「……何?」

「ううん。何でもない。」

絶対、何か思っただろ。

でも、凛が楽しそうだったから、追及するのはやめた。

就活のことを気にせず、次にどの店へ入るかだけを考えて歩く午後は、久しぶりだった。