七月上旬。
凛は、六月のうちに内々定をもらっていた。
法務の仕事を目指せる会社だと聞いた。
報告を受けた日は、俺まで嬉しくなって、お祝いに二人でケーキを食べに行った。
それは本当だった。
ただ、自分のメールにまた「ご期待に沿えず」の文字を見つけたときは、しばらく画面を閉じられなかった。
「夏樹、飯冷めるぞ。」
田中に言われて、俺はスマホを伏せた。
学食のカレーは、もう湯気が出ていなかった。
「……食ってる。」
「止まってたけど。」
向かいでは、小川がスマホを見ていた。
「詩織ちゃん?」
「うん。店、ここでいいって。」
「何の?」
「一周年。今度、飯行く。」
俺はスプーンを止めた。
「え、もう一年?」
「うん。」
「早くない?」
「お前が知らなかった期間もあるからな。」
それはそうだった。
「いい店?」
「前に、詩織が行きたいって言ってたとこ。」
「ちゃんと覚えてんだ。」
「そりゃ覚えてるだろ。」
小川は普通の顔でスマホをしまった。
俺が知らないところでも、二人はちゃんと続いていた。
会うたびに何かが起きなくても、一緒に食事をする約束が、次も、その次もある。
「何、三人とも真面目な顔して。」
トレーを持った美奈が、田中の隣に座った。
「小川たちが一周年だって。」
「ああ、お店決まった? 詩織、楽しみにしてたよ。」
「決まった。」
「よかったじゃん。」
美奈は笑って、ストローの袋を破った。
「私も報告。彼氏と別れた。」
田中の手が止まった。
俺も、思わず美奈を見た。
「……いつ?」
「先週。ちゃんと話したんだけどね。」
美奈は氷をストローで押した。
「就活が終わったら、また前みたいに会えるだろって。でも、働き始めたら、今より忙しいかもしれないじゃん。」
「うん。」
「そのたびに、私が無理して合わせるのかなって思ったら……もう、いいかなって。」
いつもの明るい声より、少しゆっくりだった。
「好きだったんだけどね。」
何か言いかけて、俺は口を閉じた。
美奈はカップを置いて、小さく息を吐いた。
「ま、しばらく自分のこと頑張る。」
「……ちゃんと寝れてる?」
田中が聞いた。
「昨日は寝た。先週はちょっと無理だったけど。」
「そっか。」
田中は、それ以上聞かなかった。
美奈も、無理に笑い直したりはしなかった。
俺はそのまま、二人の話を聞いていた。
凛は、六月のうちに内々定をもらっていた。
法務の仕事を目指せる会社だと聞いた。
報告を受けた日は、俺まで嬉しくなって、お祝いに二人でケーキを食べに行った。
それは本当だった。
ただ、自分のメールにまた「ご期待に沿えず」の文字を見つけたときは、しばらく画面を閉じられなかった。
「夏樹、飯冷めるぞ。」
田中に言われて、俺はスマホを伏せた。
学食のカレーは、もう湯気が出ていなかった。
「……食ってる。」
「止まってたけど。」
向かいでは、小川がスマホを見ていた。
「詩織ちゃん?」
「うん。店、ここでいいって。」
「何の?」
「一周年。今度、飯行く。」
俺はスプーンを止めた。
「え、もう一年?」
「うん。」
「早くない?」
「お前が知らなかった期間もあるからな。」
それはそうだった。
「いい店?」
「前に、詩織が行きたいって言ってたとこ。」
「ちゃんと覚えてんだ。」
「そりゃ覚えてるだろ。」
小川は普通の顔でスマホをしまった。
俺が知らないところでも、二人はちゃんと続いていた。
会うたびに何かが起きなくても、一緒に食事をする約束が、次も、その次もある。
「何、三人とも真面目な顔して。」
トレーを持った美奈が、田中の隣に座った。
「小川たちが一周年だって。」
「ああ、お店決まった? 詩織、楽しみにしてたよ。」
「決まった。」
「よかったじゃん。」
美奈は笑って、ストローの袋を破った。
「私も報告。彼氏と別れた。」
田中の手が止まった。
俺も、思わず美奈を見た。
「……いつ?」
「先週。ちゃんと話したんだけどね。」
美奈は氷をストローで押した。
「就活が終わったら、また前みたいに会えるだろって。でも、働き始めたら、今より忙しいかもしれないじゃん。」
「うん。」
「そのたびに、私が無理して合わせるのかなって思ったら……もう、いいかなって。」
いつもの明るい声より、少しゆっくりだった。
「好きだったんだけどね。」
何か言いかけて、俺は口を閉じた。
美奈はカップを置いて、小さく息を吐いた。
「ま、しばらく自分のこと頑張る。」
「……ちゃんと寝れてる?」
田中が聞いた。
「昨日は寝た。先週はちょっと無理だったけど。」
「そっか。」
田中は、それ以上聞かなかった。
美奈も、無理に笑い直したりはしなかった。
俺はそのまま、二人の話を聞いていた。



