十二月下旬。
凛と付き合って、初めてのクリスマスが近づいていた。
昼休み、いつもの六人で学食に集まると、話題は自然とクリスマスの予定になった。
「俺と凛ちゃんはデート。」
まだ誰にも聞かれていなかったけれど、とりあえず言っておいた。
「聞いてない。」
向かいに座っていた田中が呆れた顔をした。
「でも気になるだろ?」
「別に。」
「俺たち、初めてのクリスマスだから。」
「分かったから、何度も言わなくていいよ。」
隣にいた凛が淡々と止めてきた。
「佐藤くん、最近そればかり言ってるね。」
詩織が小さく笑った。
「だって初めては一回しかないじゃん。小川たちも一緒に過ごすんだろ?」
俺が聞くと、小川はいつもと変わらない顔でうなずいた。
「一応」
「一応って何だよ。クリスマスデートだろ?」
「映画を見て、ご飯を食べるだけ。」
「それをデートって言うんだよ。」
「知ってる。」
小川は平然としていたけれど、隣の詩織は少し恥ずかしそうに眼鏡の位置を直した。
「詩織ちゃん、それでいいの? もっとイルミネーションとか見たくない?」
「人が多いところは二人とも得意ではないから。映画を見たあと、ゆっくり話せれば十分かな。」
「なんか老夫婦みたい。」
「お前たちが騒がしすぎるだけだろ。」
小川に言われた。
否定しようとしたけれど、凛までうなずいている。
「凛ちゃんまで?」
「小川くんたちのほうが、落ち着いた付き合い方をしてると思う。」
「俺たちだって落ち着いてるじゃん。」
「大学の中庭で私を抱き上げた人が言うの?」
何も言い返せなかった。
「田中は?」
話を変えるために聞くと、田中は面倒そうに答えた。
「バイト。」
「クリスマスに?」
「クリスマスだからだよ。忙しいんだよ。」
「かわいそう。」
「お前に言われると腹立つな。」
みんなが笑う中、美奈だけは何度もスマホを確認していた。
「美奈は彼氏とどこか行くの?」
詩織に聞かれ、美奈が顔を上げる。
「うん。たぶん、ご飯に行くかな。」
「たぶん?」
「仕事が忙しいみたいで、まだ時間が決まってないんだよね。社会人だから仕方ないけど。」
いつもと変わらない明るい声だった。
けれど、スマホを伏せた美奈の笑顔は、少しだけ無理をしているように見えた。
さっきまで呆れた顔をしていた田中も、美奈を見たときだけ表情を変えた。
何か言いたそうにしていたけれど、結局、何も聞かなかった。



