ノンデリ男の敗北  ~モテる俺が法学部女子に告白したら「私は好きではありません」と普通に振られた~

その週の金曜日の夜、凛からメッセージが届いた。

『日曜日、行きたいところがあります。一緒に行きませんか』

いつも誘うのは俺だった。

毎週のように会っているのに、凛のほうから誘われただけで、すぐに電話をかけたいくらい嬉しくなった。

でも、それをしたら重いと思われるかもしれない。

三分悩んでから、『行く。どこでも行く』と返した。

『まだ場所も言ってないけど』

『凛ちゃんと一緒ならどこでもいい』

少しして、呆れた顔をしたスタンプが返ってきた。
それすらかわいく見えて、画面を保存した。


日曜日、凛が連れていってくれたのは、紅葉が見頃を迎えた庭園だった。
赤や黄色に色づいた木々の間を、二人で並んで歩いた。
前に俺が紅葉を見に行きたいと言ったことを、凛は覚えていたらしい。

「凛ちゃん、こっち見て。」

凛が振り返った瞬間、スマホを向けた。

「勝手に撮らないで。」

「紅葉と凛ちゃん、すげえ合う。」

「ちゃんと紅葉も見てる?」

「見てるよ。」

「さっきから私ばかり見てるけど。」

「紅葉より凛ちゃんのほうがかわいいから。」

「そういう比較は、紅葉に失礼じゃない?」

「紅葉って傷つくの?」

「知らない。」

そっけなく返しながらも、凛の口元は少し緩んでいた。

園内では、家族や恋人同士が紅葉を背景に写真を撮っていた。

俺も凛と撮りたかったけれど、大学であれだけ注目されたあとだ。今日は静かに過ごしたいかもしれないと思い、言うのをやめた。

すると凛が足を止めた。

「写真、撮らなくていいの?」

「撮っていいの?」

「せっかく来たから。」

近くにいた人に頼み、紅葉を背に二人で並んだ。



撮ってもらった写真の中で、俺はいつも通り笑っていた。隣の凛も、ほんの少しだけ笑っていた。

「あとで送って。」

「うん。待ち受けにしていい?」

「好きにすれば。」

許可が出たので、その場で設定した。

庭園を出たあとは、凛が気になっていたカフェへ向かった。
期間限定のモンブランを前にした凛は、今日一番真剣な顔をしていた。
その姿を眺めているうちに、昼休みの言葉を思い出した。

「ねえ、凛ちゃん。」

「なに?」

「俺と一緒にいると楽しいんだ?」

凛の手が止まった。

「それ、いつまで言うつもり?」

「一生。」

「やめて。」

「だって、嬉しかったから。」

凛はフォークを置き、窓の外へ顔を向けた。

「……楽しくなかったら、休日のたびに出かけないよ。」

「大学で会うのと、デートするのは違う?」

「違うでしょ。」

「俺は毎日でもデートしたい。」

「知ってる。」

否定されなかった。

それどころか、テーブルの上に置いていた俺の手に、凛の指先がそっと触れた。

「私も今日も会いたかったから、誘ったの。」

その一言で、大学中に付き合っていると知られたときより、ずっと浮かれた。

帰り道、俺はさっそく次の週末のことを考えていた。

「凛ちゃん、来週はどこ行く?」

「もう来週の話?」

「だって、早く決めたほうがいいじゃん。」

「日曜日なら空いてるよ。」

「土曜日は?」

「空いてるけど。」

「じゃあ、両方会おうよ。」

凛は呆れたように俺を見たあと、つないだ手に少しだけ力を込めた。

「……どちらか一日だけ。」

「じゃあ、長いほう。」

「どっちも一日は同じ長さだよ。」

付き合う前は、凛と一度会えただけで嬉しかった。

今では一日では足りないと思っている。

たぶん、俺はこれからも、どんどん欲張りになっていく。