ノンデリ男の敗北  ~モテる俺が法学部女子に告白したら「私は好きではありません」と普通に振られた~

十月上旬。
昼休み、俺は田中と小川を大学の中庭へ呼び出した。

二人に報告したいことがあったからだ。
付き合い始めてから何度も言おうと思っていたのに、凛と一緒にいるだけで浮かれてしまい、すっかり後回しになっていた。

「二人に大事な話があります。」

俺が改まって切り出すと、田中はベンチに座ったまま面倒そうに俺を見上げた。

「冬城さんと付き合った話なら、もう知ってるぞ。」

「えっ!?」

思わず大きな声が出た。
隣にいた小川も、小さくうなずく。

「詩織から聞いた。」

「それを小川から俺が聞いた。」

「なんで!?」

俺が一番に報告して、二人を驚かせるつもりだったのに。

「お前なら、もっとすぐに言うと思ってたわ。」

「言おうとは思ってたんだよ。でも、付き合った凛ちゃんがかわいすぎて、それどころじゃなかったっていうか。」

「はいはい。」

田中が呆れた顔で手を振った。

でも、待てよ。
小川が詩織から聞いたということは、凛が先に詩織へ話したということだ。
凛の性格を考えれば、わざわざ自分から恋愛の話をするなんて珍しい気がする。
俺より先に、付き合ったことを報告してくれていたんだ。
俺だけが浮かれているわけじゃない。

そう思うと、頬が勝手に緩んだ。

「なに一人でにやけてんだよ。」

「だって、凛ちゃんのほうが先に言ってたんだなって。なんか、すげえ嬉しい。」

「お前、本当に冬城さんのことになると単純だな。」

田中に笑われたところで、中庭へ向かって歩いてくる三人の姿が見えた。
凛と美奈、それから詩織だ。
凛は俺たちに気づくと、いつもの落ち着いた足取りでこちらへ近づいてきた。

「何を話してたの?」

「凛ちゃん!」

「なに?」

俺は凛の前まで駆け寄った。

「みんなに、俺たちが付き合ったこと話してくれたの?」

凛は一度だけ瞬きをした。

「話したけど。隠すことでもないし。」

「そっか。」

「何か問題あった?」

「ない。全然ない。むしろ、めちゃくちゃ嬉しい!」

嬉しさを抑えられず、その小さな身体を抱き上げるように抱きしめた。

「凛ちゃん、大好き!」

「ちょっと、夏樹くん!」



凛の足が一瞬地面から離れる。

腕の中で慌てた凛は、すぐに俺の肩をぽかぽかと叩き始めた。

「下ろして。みんな見てるよ。」

「痛くない。」

「痛くしてないから!」

顔を上げた凛の頬は、分かりやすく赤くなっていた。

その顔がかわいくて、俺はますます離したくなくなる。

「夏樹、そういうのは二人のときにしなよ。」

美奈が呆れながらも楽しそうに笑っている。

その隣では、詩織が少し頬を赤らめながら俺たちを見ていた。

「人前で抱きつくとは思わなかった。」

「俺も。」

小川と田中まで冷静に眺めている。

「ほら、みんな見てるって言ったでしょ。」

「別にいいじゃん。凛ちゃんが俺の彼女だって、みんなに見せたいし。」

「そういうこと、大きな声で言わないで。」

もう一度肩を叩かれたけれど、やっぱり少しも痛くなかった。
俺が腕を緩めると、凛は慌てて地面に足をつけた。

けれど、すぐに離れていくことはなかった。
恥ずかしそうに顔を伏せながらも、俺の服の裾を小さくつかんだままだった。
その手に気づいた瞬間、また抱きしめたくなったけれど、今度はどうにか我慢した。

付き合えただけでも夢みたいなのに、凛が俺とのことを友達に話してくれていた。
たったそれだけのことが、どうしようもなく嬉しかった。

「凛ちゃん。」

「今度はなに?」

「やっぱり大好き。」

「……知ってる。」

そっけない返事だった。

それでも凛の手は、俺の服から離れなかった。