ノンデリ男の敗北  ~モテる俺が法学部女子に告白したら「私は好きではありません」と普通に振られた~

佐藤くんは、大学の中庭で待っていた。
私を見つけると、すぐに大きく手を振る。

「凛ちゃん。」

いつもと同じ呼び方だった。
私はこの声に呼ばれることを、いつから嬉しいと思うようになったのだろう。

「待たせましたか?」

「全然。走ってきたから。」

「走らなくても、逃げません。」

「だって、凛ちゃんから二人で食べたいって言われたんだよ?」

佐藤くんは嬉しそうに笑った。

「俺、今日ここに来てよかった。」

「まだ何も食べていませんが。」

「もう十分いい日。」

本当に単純な人だった。
でも今は、その分かりやすさに安心した。

「佐藤くん。」

「なに?」

「話があります。」

佐藤くんの表情がわずかに変わった。

「もしかして、二人でって、その話?」

「はい。」

「悪い話?」

「佐藤くんにとっては、悪くないと思います。」

「じゃあ、聞く。」

佐藤くんが私の前に立った。
視線を上げる。
初めて告白されたときも、こうして佐藤くんを見上げていた。

あのとき私は、好きではないと答えた。
その気持ちに嘘はなかった。
けれど、今は違う。

「以前、私は佐藤くんのことを好きではないと言いました。」

「うん。」

「あのときは、本当にそう思っていました。」

佐藤くんは何も言わず、私の言葉を待っていた。

「でも、今は違います。」

佐藤くんが目を見開く。

私は一度息を整え、まっすぐに佐藤くんを見た。

「今は、佐藤くんが好きです。」