ノンデリ男の敗北  ~モテる俺が法学部女子に告白したら「私は好きではありません」と普通に振られた~

「それで、私たちを呼んだの?」

昼休み。

学食のテーブルで、美奈が私を見た。
隣に座る詩織も、私の話を待っている。

「相談があります。」

「うん。」

「佐藤くんを好きになったみたい。」

美奈と詩織が黙った。
二人は顔を見合わせると、同時に私へ視線を戻した。

「……それだけ?」

美奈が聞いた。

「それだけって何?」

「いや、もっと深刻な話かと思ったから。」

「私にとっては深刻だけど。」

「凛。」

詩織が控えめに口を開いた。

「たぶん、前から好きだったと思う。」

「そうなの?」

「うん。」

美奈も何度もうなずいている。

「私もそう思う。気づくの遅くない?」

「いつから分かっていたの?」

「少なくとも、花火大会の前には。」

思っていたより早かった。

「どうして教えてくれなかったの?」

「自分で気づかないと意味ないでしょ。」

美奈にもっともらしいことを言われた。

反論できずに黙る。

「それで、どうするの?」

詩織に聞かれ、私は考えた。
好きだと自覚した後のことまでは考えていなかった。

「どうするとは?」

「佐藤くんに伝える?」

「……伝えたほうがいいの?」

「そこから?」

美奈が呆れた顔をした。

「夏樹、ずっと待ってるんだから。言ってあげなよ。」

「でも、何と言えばいいのか分からない。」

「好きです。付き合ってください。でいいじゃん。」

「急すぎない?」

「今さら何を心配してるの。佐藤なら告白の途中で喜び始めるって。」

それは想像できた。

「凛らしく、普通に伝えればいいと思う。」

詩織が言った。

「以前は好きじゃなかったけど、今は好きだって。」

以前は、好きではないとはっきり伝えた。
なら、気持ちが変わったことも、私から伝えるべきなのかもしれない。

テーブルの上で、スマートフォンが震えた。
画面には佐藤くんの名前が表示されている。

『今日、みんなで昼飯食わない?』

美奈と詩織も画面をのぞき込んだ。

「ちょうどいいじゃん。」

美奈が笑う。
私は返信欄を開いた。
一度文字を打ち、消した。
もう一度打ち直す。

『今日は、二人で食べたいです。』

送信してから、急に落ち着かなくなった。
既読はすぐについた。

『二人で?』

『はい。』

数秒後、またメッセージが届いた。

『行く。絶対行く。どこにいる?』

「すごい食いつき。」

美奈が笑った。

「では、行ってきます。」

立ち上がると、詩織が小さく手を振った。

「頑張って。」

「普通に言えばいいからね。」

二人に見送られ、学食を出た。