ノンデリ男の敗北  ~モテる俺が法学部女子に告白したら「私は好きではありません」と普通に振られた~

長い夏休みが終わり、新学期が始まった。

久しぶりの大学は、夏休み前と何も変わっていなかった。

講義室へ向かう学生。
友人との再会を喜ぶ声。
暑いと言いながら、日陰を選んで歩く人たち。

見慣れた光景のはずなのに、どこか落ち着かなかった。

私は法学部棟へ向かいながら、行き交う人の中に茶色い髪を探していた。

似た髪色の男子学生を見つけては目を向け、違うと分かると前に戻す。

三度目で、自分が何をしているのかに気づいた。

佐藤くんを探している。

経済学部の佐藤くんが、この時間に法学部棟の近くにいる可能性は低い。それくらい分かっているのに、無意識に姿を探してしまっていた。

夏休み中は、何度か会った。

みんなでカラオケに行き、そのあとの花火大会では、はぐれないように手をつながれた。
二人で古本屋を巡った日には、私より楽しそうに本を探していた。

会えない日は連絡が来た。

内容のほとんどは、わざわざ送るほどでもない話だった。

今日食べたもの。
佐藤くんのアルバイト先に来た変わった客。
道で見つけた猫。
私に似た小さな置物。

最後の一つについては、似ていないと返信した。

それでも、佐藤くんから連絡が来るたび、私はすぐに画面を開いていた。

最初は、失礼な人だと思っていた。

初対面の女性に中学生かと聞き、拒絶しても気にせず近づいてくる。人との距離感がおかしく、思ったことを何でも口にする。

今でも失礼な人だと思っている。

けれど、嘘をつかない人でもあった。

私をかわいいと言うときも。
好きだと言うときも。
私の好きなところを、いくつも挙げたときも。

恥ずかしがる様子も、誤魔化す様子もなかった。

私にすずらんをくれた。
大勢の中から、いつも私を見つけた。
困っているときには、頼んでいなくても隣にいた。

一緒にいると騒がしくて、疲れることもある。

それなのに、会えないと寂しい。

声を聞けば安心する。
名前を呼ばれると、少し嬉しい。
他の女性と親しそうにしていれば、面白くない。

そこまで考えて、私は机の上に置いたスマートフォンを見た。

もう、考える必要はなかった。

私は、佐藤くんが好きなんだ。

驚きはしなかった。

ずっと前から知っていた答えを、ようやく認めただけのような気がした。