ノンデリ男の敗北  ~モテる俺が法学部女子に告白したら「私は好きではありません」と普通に振られた~

インターン終了後、同じグループのやつらと駅前の店へ行った。
一日一緒にいただけなのに、全員すっかり打ち解けていた。

「連絡先交換しようよ。」

「佐藤くん、グループ作って。」

「はいはい。」

五人分の連絡先が増えた。
そのあとも、別のグループだったやつに声をかけられ、さらに何人かと交換した。
普段なら、こうやって知り合いが増えるのは楽しかった。

実際、その日も楽しくなかったわけではない。
ただ、スマホの画面を開くたびに探してしまう名前は、一つだけだった。

凛ちゃん、まだかな。

俺が何度目か分からないスマホの確認をしたところで、隣の男子が笑った。

「佐藤、さっきからスマホ見すぎじゃない?」

「連絡待ってんの。」

「彼女?」

「違う。」

即答すると、向かいの女子が身を乗り出した。

「好きな子?」

「うん。」

「そこは隠さないんだ。」

「隠す必要なくない?」

「どんな子?」

「小さくて、黒髪で、かわいくて、頭よくて、俺に冷たい。」

「最後のは大丈夫なの?」

「大丈夫。そこも好きだから。」

全員に微妙な顔をされた。
食事が終わって店を出ると、誰かが二次会へ行こうと言い出した。
時刻はまだ九時前だった。
俺も行くつもりで、どこにするか話していたとき。
手に持っていたスマホが震えた。
画面に表示された名前を見て、足が止まった。

凛だった。

『予定が分かりました。八月十六日なら空いています。佐藤くんの都合はいかがですか?』

事務的な文章だった。
でも、俺はしばらくその画面を見つめた。

「佐藤、行かないの?」

先を歩いていたやつに呼ばれた。

「ごめん。俺、帰る。」

「え、急だな。」

「好きな子から連絡来た。」

「分かりやすっ。」

笑われたが、気にならなかった。
さっきまで行くつもりだった二次会が、一瞬でどうでもよくなっていた。
俺は少し離れた場所へ移動すると、凛に電話をかけた。
数回の呼び出し音のあと、凛が出た。

『……もしもし。』

久しぶりに聞いた声だった。
それだけで、勝手に口元がゆるんだ。

「凛ちゃん。」



『はい。メッセージ、見ましたか?』

「見た。だから電話した。」

『返信でよかったのでは?』

「久しぶりに声聞きたかったから。」

電話の向こうで、凛が黙った。

『……そうですか。』

「うん。十六日、俺も空いてる。」

『分かりました。では——』

『凛、夏樹?』

凛の声に、美奈の声が重なった。
少し離れたところから、詩織ちゃんの声も聞こえた。

「美奈と詩織ちゃんもいるの?」

『美奈と詩織も、十六日なら空いているそうです。』

「あ、三人とも来るんだ。」

『そのつもりでしたが……違いましたか?』

俺は一瞬だけ黙った。

どうやら最初から、三人で来るつもりだったらしい。
できれば、凛ちゃんと二人で会いたかった。

『佐藤くん?』

でもここで「二人がいい」と言えば、凛は警戒するかもしれない。

「じゃあさ、田中と小川も呼んで、またみんなで遊ばない?」

『私は構いません。二人にも聞いてみます。』

電話の向こうで、美奈が「賛成」と言った。
詩織ちゃんも大丈夫らしい。
俺はその場で田中と小川にメッセージを送った。
二人からの返信はすぐに来た。

『行く。』

『詩織が行くなら。』

小川の返事を見て、俺は少し笑った。

「二人とも大丈夫だって。」

『では、行く場所を決めないといけませんね。』

「俺、凛ちゃんがいるならどこでもいい。」

『いちばん困る回答です。』

久しぶりに聞いた凛の冷たい言葉さえ、なんだか嬉しかった。

新しく何人と知り合っても。
何件通知が届いても。
俺が待っていたのは、凛からの一通だけだった。

二人きりではなくなったのは、少し残念だった。
それでも、ようやく凛に会える。

六人で会えるだけでも十分だった。
そう思っていたはずなのに。

十六日、俺は自分が思っていたよりずっと欲張りだと知ることになった。