ノンデリ男の敗北  ~モテる俺が法学部女子に告白したら「私は好きではありません」と普通に振られた~

八月上旬。

俺は都内にある会社の一日インターンに参加していた。
田中たちと話したあと、なんとなく就活サイトを眺め、目についた会社へ応募した。
その会社に強い興味があったわけではない。
大学三年生の夏休みだし、一回くらいは参加しておいた方がいいだろう。
その程度だった。

会議室には俺と同じような大学三年生が三十人ほど集まっていた。
午前中は会社の説明と仕事体験。

休憩に入ると俺は真っ先にスマホを確認した。
友達から何件か通知は来ていたが、凜からはまだ来ていなかった。

午後からは五人のグループに分かれて、新しいサービスを考えるグループワークが始まった。

「とりあえず、自己紹介しない?」

グループで集まると、俺から口を開いた。
大学と学部、参加した理由。
一人が話せば次のやつにも話を振る。

「経営学部なら、こういうの詳しそうじゃん。どう思う?」

「え、私?」

「うん。俺、経済学部だけど経済のことそんなに詳しくないから。」

「それ、堂々と言っていいの?」

向かいに座っていた女子が笑った。

「大学にはちゃんと通ってるから大丈夫。」

「何が大丈夫なの?」

さっきまで固かった空気が、少しだけやわらいだ。
意見が出始めると、今度は話がまとまらなくなった。
積極的に喋るやつが二人。
それを聞いているだけのやつが二人。
俺はホワイトボードに出てきた案を書きながら、まだ発言していない男子を見た。

「さっきから考えてそうだけど、なんかある?」

「え?」

「違った?」

「いや……一応。」

そいつが出した案は、意外とよかった。

「それ、めっちゃいいじゃん。それ中心に考えない?」

そこからは早かった。
出てきた案をまとめ、時間内に発表資料を作る。
最終発表は、俺が担当することになった。
人前で喋るのは苦手ではなかった。
というより、たぶん得意なほうだった。

発表が終わると、担当の社員からも「チーム全体の意見をうまくまとめていましたね」と褒められた。

「佐藤くん、就活余裕そう。」

席に戻ると、同じグループの女子に言われた。

「そう?」

「初対面の人と、あんなに普通に喋れる?」

「喋れる。今日でもう友達じゃん。」

「距離の詰め方が怖い。」

そう言いながら、その子は笑っていた。
俺も笑いながら、机の上に置いていたスマホに目を落とした。

通知が三件。
サークルのグループと、田中と、バイト先からだった。
凛からは来ていなかった。

別に、急かすつもりはなかった。
空いている日が分かったら連絡すると、凛は言っていた。
忙しいなら仕方がない。
分かっていたのに、休憩に入るたび、俺はスマホを確認していた。