大学が夏休みに入ってから、凛と会えていなかった。
講義があるときは、昼休みになれば凛と飯を食べていた。
二人きりとは限らない。
田中や小川、詩織ちゃんが一緒の日もあれば、美奈が来る日もあった。
それでも、大学へ行けば凛に会えた。
夏休みに入って、それがなくなった。
だからといって、一人で過ごしているわけではなかった。
『夏樹、今日暇?』
『駅前いるんだけど、飯行こうぜ。』
『久しぶりに高校のメンバーで集まらね?』
昼前になると、いろんなやつから連絡が来た。
中学や高校の友達。
大学の友達。
サークルで知り合ったやつ。
バイト先のやつ。
誘われるまま飯を食いに行って、くだらない話をして笑った。
これまでは、それで十分楽しかった。
今日も高校の友達と駅前のラーメン屋に来ていた。
「夏樹、聞いてる?」
「聞いてる、聞いてる。」
「絶対聞いてないだろ。」
「彼女と海行った話だろ?」
「元彼女な。昨日振られたって話してんの。」
「あれ、そうだっけ。」
「お前、人の話聞いてなさすぎ。」
向かいの友達が呆れた顔をする。
いつもなら、もっと適当にからかっていたと思う。
でも今日は、なんとなく目の前のラーメンに集中できなかった。
凛だったら、何を頼むだろう。
醤油かな。
いや、意外と味噌かもしれない。
一人前を食べきれなくて、途中で箸が止まりそうだった。
「……夏樹。」
「なに?」
「お前、好きな女でもできた?」
思わず顔を上げた。
「なんで?」
「さっきからニヤニヤしてるから。」
「してないけど。」
「してた。」
向かいの友達が、俺を見ながら笑う。
「珍しいな。今まで付き合ってる子がいても、そんな顔してなかったのに。」
「どんな顔?」
「気持ち悪い顔。」
「お前、口悪くない?」
「事実だろ。」
飯を食べ終わって別れたあと、俺はそのままバイトへ向かった。
大学に入ってから、一人暮らしをしていた。
家賃も食費もかかるから、夏休みはいつもよりシフトを増やしていた。
三年の夏休みは、遊んでばかりもいられない。
インターンに行くやつも多かった。
俺も一応、大学から届いた案内には目を通していた。
でも、友達に誘われたところへ行けばいいか。
そのくらいにしか考えていなかった。
バイトを終えて部屋へ帰ると、もう十時を過ぎていた。
コンビニで買った弁当をテーブルに置く。
一人で食べることには慣れていたはずなのに、最近は部屋がやけに静かに感じた。
友達はいる。
誘いも毎日のように来る。
一人で過ごしているわけでもなかった。
それなのに、凛がいないだけで何かが足りなかった。
俺、こんな面倒くさい男だったっけ。
スマホを手に取り、凛とのトーク画面を開く。
最後に連絡したのは三日前だった。
俺が送った犬の動画に、凛が『似ていますね』と返していた。
何が似ているのかは聞いていない。
たぶん俺だろうと思っている。
俺は少し考えてから、メッセージを送った。
『凛ちゃん、いつ暇?』
送ってすぐ、画面を見つめる。
既読はつかない。
凛は返信が遅い。
分かっているのに、何度も画面を確認してしまった。
弁当を食べ終わるころ、ようやく通知が来た。
『しばらくはインターンの準備などで忙しいです』
やっぱり忙しいらしい。
『そっか。いつくらいまで?』
『まだ分かりません』
『じゃあ分かったら教えて』
これで会話は終わりだと思った。
少しだけ落ち込みながらスマホを置こうとすると、もう一件届いた。
『空いている日が分かったら、こちらから連絡します』
俺はその一文を三回くらい読み返した。
凛ちゃんから連絡してくれるってこと?
『分かった。待ってる』
すぐに返したあと、もう一度凛のメッセージを見る。
しばらく会えないのは残念だった。
でも、凛のほうから連絡すると言ってくれた。
それだけで、急にどうでもよくなった。
講義があるときは、昼休みになれば凛と飯を食べていた。
二人きりとは限らない。
田中や小川、詩織ちゃんが一緒の日もあれば、美奈が来る日もあった。
それでも、大学へ行けば凛に会えた。
夏休みに入って、それがなくなった。
だからといって、一人で過ごしているわけではなかった。
『夏樹、今日暇?』
『駅前いるんだけど、飯行こうぜ。』
『久しぶりに高校のメンバーで集まらね?』
昼前になると、いろんなやつから連絡が来た。
中学や高校の友達。
大学の友達。
サークルで知り合ったやつ。
バイト先のやつ。
誘われるまま飯を食いに行って、くだらない話をして笑った。
これまでは、それで十分楽しかった。
今日も高校の友達と駅前のラーメン屋に来ていた。
「夏樹、聞いてる?」
「聞いてる、聞いてる。」
「絶対聞いてないだろ。」
「彼女と海行った話だろ?」
「元彼女な。昨日振られたって話してんの。」
「あれ、そうだっけ。」
「お前、人の話聞いてなさすぎ。」
向かいの友達が呆れた顔をする。
いつもなら、もっと適当にからかっていたと思う。
でも今日は、なんとなく目の前のラーメンに集中できなかった。
凛だったら、何を頼むだろう。
醤油かな。
いや、意外と味噌かもしれない。
一人前を食べきれなくて、途中で箸が止まりそうだった。
「……夏樹。」
「なに?」
「お前、好きな女でもできた?」
思わず顔を上げた。
「なんで?」
「さっきからニヤニヤしてるから。」
「してないけど。」
「してた。」
向かいの友達が、俺を見ながら笑う。
「珍しいな。今まで付き合ってる子がいても、そんな顔してなかったのに。」
「どんな顔?」
「気持ち悪い顔。」
「お前、口悪くない?」
「事実だろ。」
飯を食べ終わって別れたあと、俺はそのままバイトへ向かった。
大学に入ってから、一人暮らしをしていた。
家賃も食費もかかるから、夏休みはいつもよりシフトを増やしていた。
三年の夏休みは、遊んでばかりもいられない。
インターンに行くやつも多かった。
俺も一応、大学から届いた案内には目を通していた。
でも、友達に誘われたところへ行けばいいか。
そのくらいにしか考えていなかった。
バイトを終えて部屋へ帰ると、もう十時を過ぎていた。
コンビニで買った弁当をテーブルに置く。
一人で食べることには慣れていたはずなのに、最近は部屋がやけに静かに感じた。
友達はいる。
誘いも毎日のように来る。
一人で過ごしているわけでもなかった。
それなのに、凛がいないだけで何かが足りなかった。
俺、こんな面倒くさい男だったっけ。
スマホを手に取り、凛とのトーク画面を開く。
最後に連絡したのは三日前だった。
俺が送った犬の動画に、凛が『似ていますね』と返していた。
何が似ているのかは聞いていない。
たぶん俺だろうと思っている。
俺は少し考えてから、メッセージを送った。
『凛ちゃん、いつ暇?』
送ってすぐ、画面を見つめる。
既読はつかない。
凛は返信が遅い。
分かっているのに、何度も画面を確認してしまった。
弁当を食べ終わるころ、ようやく通知が来た。
『しばらくはインターンの準備などで忙しいです』
やっぱり忙しいらしい。
『そっか。いつくらいまで?』
『まだ分かりません』
『じゃあ分かったら教えて』
これで会話は終わりだと思った。
少しだけ落ち込みながらスマホを置こうとすると、もう一件届いた。
『空いている日が分かったら、こちらから連絡します』
俺はその一文を三回くらい読み返した。
凛ちゃんから連絡してくれるってこと?
『分かった。待ってる』
すぐに返したあと、もう一度凛のメッセージを見る。
しばらく会えないのは残念だった。
でも、凛のほうから連絡すると言ってくれた。
それだけで、急にどうでもよくなった。



