ノンデリ男の敗北  ~モテる俺が法学部女子に告白したら「私は好きではありません」と普通に振られた~

七月上旬の土曜日。
俺たちは六人で、みどり丘ランドのプールに来ていた。
男子三人は先に着替えを終え、更衣室の前で女子を待っている。

「遅くない?」

「普通だろ。」

田中が言う。
隣で小川がスマホを見る。

「今出るって。」

「誰から?」

「詩織。」

「へえ。最近仲いいな、お前ら。」

小川は俺を見た。

「まあ。」

そのとき。

「あ、いたいた。」

美奈の声がした。
振り返る。
オレンジ色のビキニにラッシュガードを羽織った美奈。
その隣には、フリルのついた水着の詩織ちゃん。

そして。

「…………。」

最後に凛が出てきた。
黒いワンピースタイプの水着に、薄いラッシュガード。
いつも黒い服ばっか着てるのに。
なんか、全然違う。

「夏樹?」

美奈がにやにやしながら俺を見る。

「いつもおしゃべりなのにどうしたの?凛に見とれた?」

「……めっちゃかわいい。鼻血出そう。」

凛が俺を見る。

「胸見て言いましたね。」

「うん。」

「変態。」

凛はラッシュガードのチャックを上まで閉めた。

「あ、隠した。」

「誰のせいですか。」

「もう見ないって。」

「信用できません。」

田中がため息をつく。

「朝から通常運転だな。」

午前中は流れるプールで遊んだ。

美奈は浮き輪に乗ってどんどん先へ流れていく。
田中がそれを追いかけている。

小川はなぜかずっと詩織ちゃんの近くにいた。

「小川、今日詩織ちゃんとずっと一緒じゃん。」

「そう?」

「そうだろ。」

「まあ。」

「仲良くなったな。」

そう言うと、隣にいた凛が微妙な顔をした。

「……そうですね。」

「何その間。」

「別に。」

そのあと、波のプールへ移動した。
凛は浮き輪につかまっている。
最初は小さな波だったけど、しばらくすると奥から大きな波が来た。

「うわ。」

凛の浮き輪が一気に持ち上がる。

「凛ちゃん、大丈夫?」

「大丈夫です。」

とは言うけど。
凛は小さい。
周りのやつなら腰くらいの深さでも、凛だと結構深い。
しかも人が多い。
また大きな波が来て、凛の浮き輪が横へ流される。
俺は浮き輪に手を添えた。

「何ですか。」

「流されないように。」

「浮き輪があります。」

「でも凛ちゃんちっちゃいじゃん。」

「余計な一言が入りましたね。」

「事実だし。」

「それは否定しませんが。」

また波が来る。
俺は浮き輪を押さえた。

「ほら。」

「……ありがとうございます。」

「どういたしまして。」

「佐藤くん。」

「ん?」

「ずっとここにいるんですか。」

「うん。」

「美奈たちは向こうにいますよ。」

「凛ちゃん危なそうだし。」

「子供ではありません。」

「知ってる。」

凛を見る。

「でも心配だからいる。」

凛が一瞬黙った。

「……好きにしてください。」

「好きにする。」

次の波が来る。
今度は凛も慣れたのか、浮き輪につかまりながら少し笑った。
俺はその横から離れなかった。