ノンデリ男の敗北  ~モテる俺が法学部女子に告白したら「私は好きではありません」と普通に振られた~


帰り道。
駅前を歩いていると、小さな雑貨店が目に入った。
私は足を止める。
別に、今日買わなくてもいい。
佐藤くんが何を好きなのかも、まだ分からない。

だから。
そのまま帰ればいい。

「…………。」

数秒考えてから、私は店に入った。
店内には、文房具やマグカップ、小さな雑貨が並んでいる。
ハンカチ。
ボールペン。
スマートフォンケース。

「……違う。」

何が違うのかは分からない。

ただ。
佐藤くんに渡すものとしては、何となく違う気がした。
店内を一周する。
やっぱり難しい。
何をあげたら、あの人は喜ぶんだろう。

そのとき。
棚の端に、小さなキーホルダーがぶら下がっているのが目に入った。

「…………。」

犬。
たぶん。
耳が垂れていて、妙に間の抜けた顔をしている。
口を開けて笑っていて、尻尾だけやたら大きい。
かわいい……というより。
変。
私はしばらくそれを眺めた。

「……これ。」

手に取る。
もう一度見る。
たれた目。
楽しそうな顔。
なんとなく騒がしそう。

「佐藤くんに似てる。」



思わず笑った。
言ってから、自分で少しおかしくなる。
本人がいないのに。
雑貨を見ただけで、佐藤くんを思い出した。

「…………。」

私は手の中のキーホルダーを見る。
お返しとして正しいかどうかは、分からない。
たぶん、もっと無難なものはいくらでもある。

でも。
これを見た瞬間に、佐藤くんの顔が浮かんだ。

それなら。

「……これでいいか。」

私はそのキーホルダーを持って、レジへ向かった。