ノンデリ男の敗北  ~モテる俺が法学部女子に告白したら「私は好きではありません」と普通に振られた~

大学から少し歩いたところにあるイタリアンレストランへ入った。
昼時だからそれなりに混んでいたけど、ちょうど二人席が空いていた。

俺はミートソース。
凛はトマトとモッツァレラのパスタ。
どっちもサラダがついてくるセットだ。

「凛ちゃん、トマト系好きなんだ。」

「好きですね。」

「へえ。」

「何ですか。」

「いや。知らなかったなと思って。」

パスタを食べながら、凛を見た。
甘いものが好きなのは知ってる。
いちごのクレープが好きなのも知ってる。
でも、それ以外はあんまり知らない。

「他に何好き?」

「食べ物ですか?」

「うん。」

「急ですね。」

「知りたいから。」

凛が少しだけ俺を見た。

「……オムライスとか。」

「へえ。かわいい。」

「食べ物にかわいいも何もないでしょう。」

「凛ちゃんがオムライス好きなの、なんかかわいい。」

「意味が分かりません。」

「あとは?」

「なぜそんなに聞くんですか。」

「だから、知りたい。」

そう答えると、凛が一瞬黙った。
俺も自分で言ってから気づく。
前まで、女の子が何好きかなんてそんなに気にしたことなかった。
彼女ができても、向こうが行きたいって言った店に行けばよかったし。

でも。
凛ちゃんの好きなものは知りたい。
好きじゃないものも。
何したら笑うのかも。
何したら怒るのかは、結構知ってるけど。

「……甘いものは好きです。」

「それは知ってる。クレープ食ったときもめっちゃ嬉しそうだったし。」

「普通でした。」

「全然普通じゃなかった。」

「普通です。」

相変わらず認めない。

食事を終え、なんとなくメニューを開く。
下のほうにデザートが載っていた。
ティラミス。
パンナコッタ。
ジェラート。

「そういえば。」

俺はメニューを凛ちゃんのほうへ向ける。

「デザートも食べる?」

「……。」



凛ちゃんの視線がメニューに落ちる。
さっきパスタを選んでいたときより真剣だ。
分かりやす。

「俺、おごるけど。」

「別に、おごっていただかなくても。」

「食べたい?」

「……。」

「凛ちゃん?」

「見ています。」

「何を?」

「メニューを。」

「どれ食べたい?」

「まだ食べるとは言っていません。」

「ティラミス?」

「……。」

「パンナコッタ?」

「……。」

「いちごのジェラート?」

凛ちゃんが顔を上げた。

「それにします。」

「即答じゃん。」

「何ですか。」

「いや。」

思わず笑う。
さっきまでいつもの真顔だったのに。
メニューを見る目が、ちょっとだけ楽しそうだ。
こういう顔するんだ。

「凛ちゃん。」

「何ですか。」

「かわいい。」

「急に何ですか。」

「デザート選んでるとき、めっちゃ目輝いてた。」

「輝いていません。」

「輝いてたって。」

「気のせいです。」

「じゃ、ジェラートいらない?」

「いらないとは言っていません。」

「やっぱいるんじゃん。」

凛ちゃんがじっと俺を睨む。

でも。
その視線は、初めて会ったころより全然怖くない。
俺は店員を呼んだ。
外を見る。
まだ雨は降っていた。
朝からずっと雨で、今日は最悪だと思ってた。
田中も小川もいないし。
凛ちゃんから連絡も来ないし。
つまんない一日になると思ってた。

でもまあ。
凛ちゃんと二人で飯食えたし。
好きな食べ物も分かったし。
楽しそうな顔も見れた。
今日は、いい日かも。