ノンデリ男の敗北  ~モテる俺が法学部女子に告白したら「私は好きではありません」と普通に振られた~

昼休み。
一人で学食へ向かった。
入口にはいつも通り学生が溢れている。
何食おうかな。

ラーメンでも――。

「あ。」

食券機の前にできた列。
その中に、見覚えのある小さな後ろ姿があった。

黒髪。
モノトーンの服。
見間違えるわけがない。
さっきまでのだるさが一瞬で消えた。
俺はそのまま近づく。

「ねえねえ、彼女。一人?」

凛が振り返った。
俺を見た。

「ナンパみたいな声のかけ方、やめてください。」

「佐藤くんって呼んでよ。」

「そこですか。」

俺は笑った。

「凛ちゃんも一人?」

「詩織は午後からです。美奈は他の友人と食べるそうなので。」

「じゃあさ。」

俺は食券機を見る。
それから、凛を見た。

「俺と飯食いに行こうよ。」

「今ここで食べようとしているのですが。」

「ここじゃなくて、別のとこ。」

「なぜですか。」

「せっかく二人とも一人なんだし。」

「一人でも食事はできます。」

「できるけどさ。」

俺は少し考える。

「一人で食べるより、二人で食べたほうがおいしいよ?」

「食事の味は人数では変わらないと思います。」

「じゃあ俺と食べても味変わんないじゃん。」

「どういう理屈ですか。」

「何食べたい?」

「まだ行くとは言っていません。」

「じゃあ、何なら行く?」

凛が黙った。

「和食?」

「……。」

「ラーメン?」

「……。」

「パスタ?」

ほんの少し、反応した。

「あ。」

「何ですか。」

「パスタ?」

「……好きですけど。」

「じゃあ決まり。」

「勝手に決めないでください。」

「大学の近くにイタリアンあるじゃん。あそこ行こ。」

凛は小さくため息をついた。

そして。
食券機の列から離れた。

「まあ、今日は一人ですし。構いません。」

「よっしゃ。」

「何でそんなに嬉しそうなんですか。」

「凛ちゃんと飯食えるから。」

「……そういうことを普通に言いますよね。」

「だって嬉しいし。」

凛は何も言わず、先に歩き始めた。
俺はその隣に並ぶ。
外へ出ると、相変わらず雨が降っていた。

でも。
なんか、さっきより全然嫌じゃなかった。