もしも私によめいがあったら

「知ってる?」

「何を?」

「あいのこと」

「あー……あい?」

名前を聞いて、少し考える。

同じ学年にいる女の子。

顔と名前は知っている。

でも、ちゃんと話したことはない。

「なんかさ、あいって好きな人すぐ変わるらしいよ」

「え、そうなの?」

「うん。なんかそういう噂ある」

「へー」

私は、それくらいにしか思わなかった。

別に興味があったわけでもない。

でも、それからだった。

あいの名前を聞くことが少しずつ増えていった。

「また好きな人変わったらしいよ」

「えー、また?」

「なんか、そういう人なんじゃない?」

誰かが話している。

その輪の中に私がいることもあった。

私は、その話を聞きながら笑ったり、相槌を打ったりしていた。

でも、あい本人と話したことはない。

だから、本当なのかなんて分からない。

分からないはずなのに。

何度も聞いているうちに、それが本当のことみたいに思えてきた。

噂って、そういうものなのかもしれない。

一人が言って。

もう一人が聞いて。

別の誰かがまた話して。