きみがスキ



警察署の狭い空間に

放心状態のももちゃんと

泣き崩れるお母さんと

きっと怒りで震えているお父さんがいて


まだ、、

あの空間に

俺の出来ることはないから


呆然と遠くから眺めることしか出来なくて…

ただ、、遠くから

「久下 元哉 を 逮捕」

そのワードが聞こえた時

ももちゃんから

少しだけ肩の力が抜けたように見えた


きっと、、

まだ怖かったんだと思う。

同じくらい……

きっとそれ以上に

俺よりもっと怖かったとおもう。


安心させてあげられたら、、

ももちゃんが生きててよかったと

それだけでも伝えられたらいいのに


鉛のように重くなった足が

1歩も動いてはくれない…

今はまだ、、

近づいては行けない気がする、、



「遼太くんはもう帰りなさい、遅いから、、」

「……話せなくていいです、今は…大丈夫です、、」

「でも、、、近くにいさせてください。」

…

「親御さんに連絡して、我が家に泊まると言いなさい。」

「それから、少しだけ親御さんと話をさせて欲しい。」

震える手で携帯を渡した。

無責任な息子だと問われるのかもしれない

結婚をなしにすると言われるのかもしれない

少しだけ、、

いや、、かなり不安になった、


ただ返ってきた言葉は

「しばらくうちにいなさい…」

それだけだった。

ももちゃんの家に帰ったら

婦警さんといっしょにいるゆずが

眠そうに起きてきた。


ゆずだって不安だったのに

ももちゃんに会いたかったのに

あの事実を聞かせるには早いんだと

誰もが判断したんだろう……


「りょうた、、?ももちゃんは、?」

「……みつかったよ。 もう大丈夫。」

「ももちゃんと話せる?」

「……もう疲れちゃったみたいだから、ゆずも寝よう?」

「また、、明日にでも、、話そっか。」


緊張からほぐれたように

腕の中で眠るゆずを抱きしめて

寝付けない夜を

ゆずの頭を撫でながら過ごした。


ももちゃんのそばには

お母さんがいてくれるから

警察との話は

お父さんがしてくれるから


ゆずを安心させることだけは

おれにもできることだから、


…

…


小さく握られたおにぎりと味噌汁

静かに横に置かれて

もう朝なんだと知った。

気づいたら窓の隙間から日差しが顔を見せてた。


「ももちゃんは、、」

「やっと眠ったの。遼太くんもそろそろ寝て…?」

「柚羽は私が抱っこするよ?」

「……眠れてよかった、、」

寝れたんだ、、

怖かっただろうに、、

そっか、よかった、、

「もう少しゆずを抱っこしてたいです…」

「ももちゃんもこうしてあげたいはずなので、、」

「……そう、じゃあおねがいね。」

「はい、」

すやすや寝息立てて

少しだけ笑う寝顔は

やっぱりももちゃんに似てんね、、

ごめんね、お姉ちゃん守れなくて……

…

…

「…た…りょうた……?」

「ん、ゆず、、?」

「もうおひるだよ、、?」

「ん、、ごめん寝ちゃってた……」

相変わらずひざの上にのって

ほっぺなんかつねるから

地味に痛いのに

この痛さが泣けてくる


「ゆず、、おにぎりと味噌汁たべたよ?」

「いいよ、笑 ゆずはちゃんと食べないとね」

「ゆず、、ももちゃんのところ行きたい。」

…

おれも、、

いけたらいきたいな、、

でもまだ、こわいから、、

ももちゃんも、おれも、、

「お母さんに聞いてきな? 俺はリビングにいるよ、」

「まま、ももちゃんの部屋にいるの!」

「そっか、じゃあリビングで降りてくると待ってよ。」

ゆずの手を引いて

何度もあがったのに

いつもいたのに

ももちゃんだけ形跡がなくて

さみしい……

「ぱぱ!ももちゃん帰ってきた?ももちゃんに会える?」

「柚羽、、桃羽はね少し体調崩しちゃったんだよ…笑」

「桃羽が降りてくるまでは会えないかな…笑」

…

…

上から、、

泣きじゃくる声と

少しの物音が聞こえてきて

起きたんだって安心感と

不安が抜け切れてないんだって悲しさと

あいた腕が寂しくて 独りよがりに

柚羽を抱き寄せた。

代わりにしてごめんな、ゆず、、

…

…

…


それから3日、、

4日、、 5日、、

1週間……


板を挟んで反対側にいる桃羽に

会うことも声をかけることも出来なくて

ただここにいることだけしか出来ないのも

情けなくて……


1日1食の

小さなおにぎりを半分だけ残して

廊下に戻されるのは

それを片付けにいくのは

中にいる桃羽が心配で仕方ない、


23:00〜25:00

この間にお風呂に入ってるのも

みんなが下にいる時にお手洗いに入ってるのも

音だけが生きてることを証明してくれて

いまどんな顔で

どんなこと考えてるのかは

分からない。