きみがスキ


 始まり__


 たぶん、となりの学区の

 たぶん、同じ年の

 たぶん、志望校が同じ男の子



 塾の夏期講習でたまたま斜め前の席がきみだった。

 しゃべったことはないけど、

 休み時間いつも男の子ふたりと

 いっしょにいるから

 この人たちも同じ高校志望なのかなって

 ほんとそれくらいの印象。


 …


 「 桃羽〜 今日の模擬テスト 判定B以下なら志望校変えなきゃなんだよ〜…… 」

 「 栞は元々頭いいほうだしB以下はないんじゃない?」

 「 県内でも結構なレベルだよ?うちらがいくとこ、」

 「 ん〜… でもまぁ、、まだ夏季講座だし。」

 「 桃羽の定期呑気きちゃ、、 テス勉してくる…… 」

 定期呑気って、、

 韻踏んでくるのやめて笑

 とかいいつつ、わたしも判定Aもらえなかったら

 志望校落とすか迷ってるんだよね……。

 どうしよう…


 「…あのっ、消しゴム2個持ってたりしませんか?!」

 あ、、斜め前の人、、

 消しゴムって、、

 「えっと、、? 消しゴムですか?」

 「そ!今日に限って入れ忘れちゃって……」

 「……予備のやつなので最悪持って帰って大丈夫です。」

 模擬テストの日に消しゴム忘れるなんて

 おっちょこちょいだなぁ……

 2個持っててよかった… ふぅ…

 「終わったらちゃんと返す!ありがと!!」

 …

 …

 夏の牢獄みたいな模擬テストは

 夕方までみっちりスケジュールすぎて

 さすがチョコ食べないとむり…

 「栞チョコレートたべる?」

 「え〜溶けてそうだからいら〜ん」

 「対策済ですぅ〜!いいもん!わたしがひとりで食べる」

 お昼ご飯と糖分摂取…

 飲むヨーグルト買いに行きたかったけど

 お腹壊したらやだから帰りにコンビニで買って帰ろう

 たのしみ……

 「あ、ねぇ午前の国語 問8って答え何?」

 「え〜っと、、 松尾芭蕉だったはず。」

 「うっわ、、多分漢字ミスった。」

 「あ〜、、あんなに言われてたのに…笑」

 え、、

 松尾芭蕉の松って末じゃないよね?

 あれ、、?不安になってきた…

 うわあ、、、チョコレート摂取、、、

 「午後も模擬がんばろう〜、」

 「うんっ!」

 …

 …

 …


 17:30

 みっちりスケジュール完遂!

 つかれたあ……

 「栞〜!帰りコンビニで飲むヨーグルト買いたい!」

 「ほ〜い!んじゃ帰ろ。 疲れすぎてはよ寝たい」

 「…わかる、、あ、でも今日ゆずと花火する」

 「相変わらず仲良し姉妹で何より笑」

 そうだそうだ!花火だ!

 ゆずの分も甘いものなにかかってか〜えろっ!

 いちごみるくとキャラメルミルクどっちがいいかな…


 ん〜、、、

 いちごみるくっ!

 「「あっ、、」」

 「すみません……お先どうぞ、」

 「あ、、、消しゴムのひと。」

 消しゴム、、、

 あっ、朝貸した人だ、、

 「教室いなかったから次返そうと思ってて!」

 「あ〜、貸したの忘れてました……笑」

 「はい、ありがとうございました。」

 「いえ。 テストお疲れ様でした」

 「そちらこそ、お疲れ様です笑 では、、笑」

 凄い、、

 借り物だから丁寧に使ってくれたのかな

 左側だけ異様に削れてる笑

 …

 …

 …


 「栞また明後日ね〜!」

 「ん!またね!!」

 花火っ!飲むヨーグルトっ!

 たのしみすぎる…おなかすいたあ……


 「ただいまぁ、、」

 「ももちゃんおかえり〜!!!!!」

 「わっゆず!ただいまぁ。 いちごみるく買ってきたよ」

 「ほんと!!ももちゃんすきぃ……」

 「花火のあと一緒に飲もっか!」

 嬉しそうににこにこはしゃいでる

 ほんとかわいい、、

 髪伸びたなあ…

 わたしもそろそろ切りたいな…


 …

 …


 夏期講習も終わって

 秋の合唱祭も終わって

 受験前最後の冬期講習……


 志望校もほぼ決めて

 滑り止めの私立は合格も既に決まってて

 県立の本命のためにもここから怒涛の受験勉強…

 「桃羽、さっき先生がメルティーキッス配ってた」

 「ほんと?!抹茶かな?いちごかな!行ってくる!!!」

 やばいやばい!

 メルティーキッスはご褒美のときにしか

 食べない高級なやつなの!!

 うわぁ!!ほしい!

 ほしいのに、、

 人多すぎて埋もれる……


 「……チョコほしいの?」

 「え、?」

 「ぴょんぴょん跳ねてっから…笑」

 「あ、、うん。メルティーキッスだよ?ほしくない?」

 「そうだね笑 これ、、普通のと抹茶あげる。」

 え???

 こんなご褒美菓子を……?

 受験生がくれるのですか???何故……?

 「え、いいの。?」

 「俺、いちごのたべたかっただけだし」

 「……いただきます。」

 わあ、、やさしいひと、、、

 あれだ、、斜め前の人だ、、、

 「受験、お互いがんばろーね」

 「はい。笑」

 …

 …

 世の中が

 クリスマス

 お正月

 バレンタインって

 浮かれてる中参考書片手に歩く道のりとか

 塾と家の往復とか大変だったけど

 明日、受験当日がすぎたら

 ぜっっったいメルティーキッス箱買いしてやる、、


 …


 とは言っても緊張しいなので……

 校門前で一生心臓ばっくばくなんです。

 栞も来ないし、、

 ええ、、どうしよ、、

 受験票忘れてないかな、、


 不安すぎる不安すぎて倒れそう

 …

 「桃羽ごめんおまたせ」

 「栞おそい〜…不安でしぬかと、、」

 「大袈裟な笑 がんばろっか、、」

 「うん、。」


 あ、、

 受験票落ちてる、

 これやばいじゃん、、

 『倉塚 遼太』 くんさん、、?

 あ、、塾の、、 チョコの人だ……

 受験番号近いっ! 同じ教室かな、、

 …

 えっと、

 えーーっと、、

 えーーーー、、、

 いたっっ!!!

 「あの、、倉塚くん?」

 「あ、櫻井さんだっけ、、」

 「あ、うん。あのこれ、、落ちてたよ」

 「えっ!!!あ、ありがとう、、」

 いっしょに夏から頑張ってたから、、

 合格、しようね。

 「がんばろうね。」

 「うん、ありがと」