どこをどう歩いたのか、私は無意識に歩き続けたのだろう。もうずぶ濡れで足が痛い。痛いというより、感覚がなくなっている。 棒のようだ。 漆黒の闇夜に写し出された風景は、押し寄せては引く波の広大に続く景色だった。 (なぁんだ。海まで来ちゃった。) もう感覚は無いんだもの、靴なんかいらない。 海にたどり着くまで、きっとあの場所からだと歩いて3時間はかかっただろう。 歩いてきた道を思い出せない。 浮かぶのは、凌との日々と最後にあの女の人の視線。