世界で一番わがままな君とガラスの心臓

ふんと鼻を鳴らして、明日は慣れた手つきで重い木枠の玄関引き戸を閉めた。


学校や近所の大人たちの前で見せる、病弱で健気な「第一のお姫様」。


そして、私と二人きりになった時だけ姿を現す、ワガママで口が悪くて、世界中のすべてに怒りをぶちまける「第二のお姫様」。


この二つの顔を持っていることを知っているのは、世界中で私ひとりだけだ。


「さ、立ち話してないで上がりなさい。風花のバカみたいに分厚い部活の汗の匂いで、家の中の静寂が汚れるけど」


「言い方! だからアイス持ってきたって言ってるでしょ」


薄暗い廊下を歩きながら、私は明日の細い背中を見つめた。