「……、っ……」
瞼を掠めた睫毛の先のくすぐったさと、口元の柔い感触。
ぎゅっと捕まったままの手首に触れた熱は熱くて、腰まで捕まってしまったから逃げられない。
いつも触れ合うだけだった感触が、一瞬角度を変えて擦れ合う。
背筋がぞくりとして指先が引き攣ると、そこに爽真の熱っぽい視線が落ちた。
「……」
どこかふわっとした感覚になった途端、爽真がゆっくりと顔を離す。
ずっと掴んでいた私の手首を引き寄せると、そこにも自分の唇を押し当てた。
「なッ……」
ひくんと喉が鳴って、体温が上がる。
そっと持ち上がる夜色の目はどこか煽情的で、ただならぬ色気が漏れ出していた。
「男の寝室に入るのがどういうことか、わかってる?」
「…………っ!」
低く艶の混じる声に、言葉が詰まる。
動揺に目が泳いでいる私をしばらく見つめてから、爽真はそっと私を解放した。
「……わかったんなら、今後気軽に侵入しようとしないこと」
ポンと頭に乗る手はもう優しい。
なのに胸の鼓動はずっと引かなくて、爽真の感触が残る口元を押さえて立ち尽くしている。
よく知った柔い手つきで、爽真が私の髪を撫でる。
安心させるかのように、腰を低くして顔を覗き込んできた。
「驚かせて悪かった。もうしない」
「え……」
「え?」
爽真の面食らった顔に、ハッとする。
今私、何を残念だと思ったのか。
「あ……いや……ううん。私こそ、ごめん」
ふっと目を逸らすと、爽真も何事もなかったかのように頷く。
「……」
「……」
向き合ったまま、目を逸らしあって黙り込む。
訪問初日にして、はやくも禁止区域ができてしまった。



