「説明不足ですみません。同棲じゃないです。
俺が再来月一人暮らしを始めるので、その準備を瑠奈に手伝ってもらってます」
堂々。
あまりの毅然とした態度に、社長も黙る。
偶然そばを通りかかった清掃員のおばちゃんが、「えー!じゃあもう爽真くん、来なくなっちゃうのぉ!?」なんて残念そうな声を上げた。
「ほー…ならいいけどよ。じゃあもうあの場所は不要ってことか。立派になったじゃねぇか」
「はい。今まで気遣ってくださって、ありがとうございました」
“新婚” “同棲”
衝撃ワードに固まっている私をよそに、社長がちょいちょいと爽真を手招きする。
爽真が素直に近づくと、ガッとその首に腕を回して捕まえた。
「瑠奈はウチの大事な稼ぎ頭だ。間違っても間違い起こすんじゃねぇぞ」
「……わかってます」
「ならいい。好きにしろ。
ただしアイツ、賢いくせに色恋だけは幼稚園児並みの脳みそだからな。苦労するぞ。心していけ」
「……。それもわかってます」
「若者の恋愛事情を悪戯に煽るのはやめてください、社長」
社長の後ろで密談を聞いていた御手洗が、メガネのレンズを光らせてズバッと指摘する。
渋い顔のコソコソ話に私の怪訝な顔が向き始めたところで、社長がパッと爽真を解放した。
「なんの話してたの?」
「いや、別に」
「新生活祝いに洗濯機買ってやるって話ですよ」
「おいテメェ御手洗。何抜かしやがる」
「えー、やったじゃん爽真!最新のやつ買ってもらお!」
「……や、自分で揃えるし……」
ドタバタしながら、着々とまずは家電に目星をつけていく。
ひと段落したところで、次は家具やインテリアだ。



