……。ひとり、ぐらし?
「え?……一人暮らし?」
想像もしてなかったワードに、頭と口で同じ言葉を反復した。
「そう。って言っても、高校卒業した後。
春からな」
爽真の目は意味深に真っ直ぐで、何か人生の重要事項を言っているかのよう。
対する私は言った側から自立だ、なんて呆気に取られている。
「場所は事務所の紹介だから選択の幅は少ないけど、セキュリティはちゃんとしてるし。それなりに仕事もこなせてるから、ちゃんと自分の稼ぎでやっていける」
「……そっか」
なんのプレゼンをされているのか。
とにかく、神妙な顔で聞く一方だ。
「瑠奈の受験が終わったら、必要なもの揃えるの手伝ってほしいんだけど」
「へ?」
頭にコツンと星が落ちるような拍子抜け。
……なぜ私に?
あ、彼女だからか。そういうこと?
「いい、けど……。
インテリアとか家電とかわかんないから予習しとく。
予算あるなら言っといて」
「……ふ、受験終わったら言う。
だからそれまで仕事と勉強に集中して」
ホッとしたみたいな爽真が、なぜか嬉しそうに笑みを漏らす。
随分砕けた柔らかい顔。いまだに貴重な表情だ。
「うん、わかった……」
この日以降、クリスマスも年末年始も仕事に勉強と忙しかったし。
事務所密会もままならぬまま、試験が終わるまで会えない日が続いた。



