覚醒し切らない瑠奈の目が、ぼんやりと俺を捉える。
思わず緊張して固まると、だらんと落ちていた手が俺に向かって伸びてきて、濡れた髪を撫でてきた。
「おかえり、爽真」
(……ああ、無理だ)
いつもよりふやけた声とゆるい笑顔に、自分への疑念が一気に晴れる。
こんなに大切で、好きなのに。
乱暴に扱うなんて、絶対にできるわけがない。
「……うわ。なんか髪濡れてる。
雨でも降ってた?早くシャワーとかしてきなよ、風邪引くよ」
俺の髪に指を通した瑠奈が、何も知らずに顔を顰める。
それにすら安心して、胸が熱く狭くなった。
「なんでいんの?」
「電話口の爽真がおかしかったから」
「……そっか」
不安なんて必要なかった。
瑠奈はいつもちゃんと隣にいてくれて、俺のことを想ってくれてる。
「心配かけて悪かった。でももう大丈夫だから。
タクシー呼ぶし、もう帰っても――」
ピシャーン!!
カーテンを閉め切った窓の外で、近くに雷が落ちた音がする。
直後、滝のような荒れた音がし始めた。



