「“今夜は、帰しません。絶対に――”」
「止めてくださーい」
さっきまで恐怖で固まった顔をしていた美咲が、御伽蘭子に戻ってゆるい声を出す。
その合図で止まる現場。
監督も、彼女に委ねるように何も言わないでいる。
「瀬名くぅん。気持ち入ってないよ。
さっき使える感情、いーっぱい浴びたでしょ?
それ、活用しなきゃ」
めっと小さな子どもを嗜めるような言い方。
やっぱりさっき映画のSNSを見せたのは、感情を作らせるためだったのか。
そう思うと余計に冷めて、空虚になる。
瑠奈を平気で利用する御伽蘭子にも、それに感情が動いてしまう自分にも、嫌気が差す。
黙っていると、するりと御伽蘭子が俺の肩に腕を回す。
周りにいる誰にも聞こえないように、低く囁きかけてきた。
「ちゃんと想像して?
だーいすきで誰にも渡せない人が、他の誰かのところへ行こうとするところ」



