「“なんで?美咲さんがいるのに浮気するような、最低な奴ですよ?”」
「“……それはもうお互い様。だからこそ、水に流すって決めたの”」
触れようと伸ばした手を、身を引いて拒まれる。
ふっと香る、男物の香水の匂い。
全く知らない匂いだから、今日は演技として受け止められる。
「“……だからもう。侑征くんとは終わり。
お互い本気じゃなかったんだし、もういいでしょ?”」
「“俺は本気でしたよ”」
食い気味に言って、美咲の腕を掴む。
御伽蘭子の腕が想像以上に細くて、力強く掴んだ手が思わず少し緩んだ。
「“せっかく手に入れたのに――美咲さんを誰にも渡したくない。俺以外見えないように、めちゃくちゃにしたい”」
――感情が乗り切らない。
目の前の人を、御伽蘭子だと実感してしまったからだろうか?
いや、それよりも。
さっきくらったダメージが、抜けきらないからな気もする。



