【続編】ふたりの恋のそだてかた。




数十分して着いたのは、高いビルの間に挟まれたなんの変哲もない小さなマンション。
そこに人の生活している気配はない。

なぜならここはレンタルスペース。
必要な人に必要な時間だけ、場所を提供してくれる施設なのだ。

慣れたように迷わずエレベーターに乗り込んで、最上階の3階に上がる。
一番端の角部屋。ここがお決まりの予約室。


「誕生日でもキッカリ2時間ですよ。今日は時間も遅いですから」

「わかってるよー、じゃね。御手洗。あとでね」


玄関に入ると、間も置かずに鍵を閉める。


入ってすぐに、リビングに続くドア。
足元には、綺麗に揃った大きめのワークブーツ。

ヒール付きのブーツのジッパーを下ろして、中に上がり込む。

ドアノブに手をかけた時、同じタイミングで扉が開いた。


「わっ」
「と、」


リビング側にドアを引かれて、前に引っ張られる。

視界いっぱい、ダークグレーのスウェット生地。
ふわっと鼻先を石鹸の匂いが掠めた。


「悪い、タイミング被った」


つま先数センチの距離のまま、気まずそうな声に顔を上げる。
その人を目が捉えた瞬間、満面の笑顔が溢れた。

「ただいま!爽真っ」

「……」

私を見下ろす爽真の顔が、きょとんとする。
今持っている雑誌の中にいる人とは、まるで別人みたい。


「……ただいまは、おかしいだろ」


ちょっと照れて、仏頂面を横に逸らす。
「いいじゃん」と軽い足取りで、さっさと手を洗いに行った。