「前回の課題克服してた。
画と作品の空気感を壊さない等身大。良かったよ」
「ありがとうございます」
監督に褒められて、心の中でガッツポーズしながら毅然と一礼する。
「でもちょっと濃度が濃いな。
人生最大の窮地に恋人が現れたくらいになってたから、もう少し感情の軽さがほしい」
「……。……はい」
ゔっ。そうか……
持ってる感覚をそのまま使うと、そういうことになるのか。
片思い未満の2人に持ち込むには感情が重過ぎた。
状況に合わせた濃度調節が必要ってことか。
私の出典元、爽真しかないからなぁ。
この作品の雰囲気に合わせるの難しい。
うーん、と1人唸る私に、紫苑が複雑そうな顔をしている。
「……瑠奈ちゃん。今の演技、何したの?」
「え?……」
言ってもいいけど、こんなところでは言えない。
私に彼氏がいるってことが露呈してしまう。
「……ちょっと似たような体験の感覚を、引っ張ってきただけ!」
「……へぇ」
なんとなく、面白くなさそうな顔。
それは演者としてなのか、それとも――……。
(とにかく、最大の課題はクリアできた。
あとはちゃんと他のシーンでもハマるように、しっかり詰めないと……)
リテイクは、かなり濃度を薄めて一発OK。
――私の演技が、爽真の影響で一段進化した瞬間だった。



