「……ごめん、爽真……」
「……いや」
離れようとしたのに、肩を掴む爽真の手に力が入って離れられない。
近い距離に石鹸の匂い。
夏の頃より体温を隔てるものが厚くなっているはずなのに、広く触れ合った面積がやけにあったかく感じて、きゅんと胸が苦しくなってきた。
「あの……抱きしめても、いいですか」
言いながら、じわじわと手を背中に移動させる。
爽真の喉がヒュッと鳴った。
「っ、……だから、そういうとこ」
許可が降りるより先に、肩にあった爽真の手が私の後頭部と背中に回って、ぎゅっと抱きしめられてしまう。
「――っ!」
もう背中に到達しかけてた私の手がびくっと強張って、固まって――それから、やっと同じように抱き返した。
「来てすぐこれとか、がっついてるみたいで出来ればしたくなかったんだけど」
「……それが高校生男子だって、社長から聞いたけど?」
「……。何吹き込まれてんだ、お前」
緊張に力んだ抱きしめ方が、ちょっとずつ緩んでラフになっていく。
ほぼ事故だし、また部屋の隅っこだし。
恋愛初心者すぎて、少しも格好はつかないのだけど。
告白して以来一歩も進んでなかった恋人らしさが、ちょーっとだけ、よちよち歩きを始めた気がした。



