夢では幸せになりましょう

株で大きく負けたことは、私は知っていた。

だからこそ、一年前の彼の変化も覚えている。

最後の一か月、会いに来てくれるペースが減ったこと。

いつもと様子が違っていたこと。

そして、何も言わずに消えてしまったこと。

彼はその後の一年について話してくれた。

株で大きく負けたこと。

仕事も変えたこと。

今は別の会社で営業をしていて、以前よりも収入があること。

「今はちゃんとやってる」

彼はそう言った。

「お前に頼るつもりもない」

「……そっか」

私はようやく安心した。

そして、そっと彼の手を握った。

一年ぶりに触れた手。

ずっと忘れたつもりだった。

なのに、握った瞬間、不思議なくらい自然だった。

彼は少し驚いた顔をした。

そして、私の手を握り返した。

「前は、あんまりキスしてくれなかったよね」

私が言うと、彼は少し笑った。

「今はする」

「なにそれ」

「したいから」

そう言って、彼は私のほうへ顔を寄せた。

優しくキスをされた。

胸がいっぱいになった。