夢では幸せになりましょう

だから、忘れようとした。

別の人とも付き合った。

優しくしてくれる人だった。

ちゃんと私を大切にしてくれる人だった。

「この人を好きになれば、きっと忘れられる」

そう思った。

しばらくすると、自分でも本当に忘れたつもりになっていた。

もう大丈夫。

もう好きじゃない。

あの人は過去の人。

そう思っていた。

でも、全然好きになれなかった。

どれだけ優しくされても。

どれだけ大切にされても。

心のどこかに、彼と比べている自分がいた。

ふとした瞬間に思い出してしまう。

彼の笑った顔。

くだらない話。

毎日のLINE。

片道一時間かけて会いに来てくれたこと。

会えばずっとくっついていたこと。

一緒に買ったもの。

私は、それを捨てることもできなかった。

何度も「もう捨てよう」と思った。

でも、結局捨てられなかった。

写真だって、消せなかった。

スマホを整理しているときに見つけて、消そうとする。

でも、指が止まる。

「また今度でいいか」

そう思って、結局そのまま。

気づけば、全部残っていた。

そのとき、ようやく思った。

私は、全然忘れられていなかったんだ。

もうダメだと思った。

きっと、この人のことはずっと忘れられない。

そう思いながら、私は彼との思い出を心の奥にしまった。

それから一年。

私は、もう本当に彼を忘れたつもりでいた。