まだ青い彼

 私が21歳の時は……。

 21歳の時の私は――……21歳の彼を前に記憶へと想いを馳せる。
 もちろんその頃の私はまだ学生で、同じ大学の先輩や同級生や、時々は後輩とみんなで出かけたり。バイト仲間ともよく遊んだ。
 そのうち、その中で意識する子が出来て、気になり始めて……。よく目が合うようになって、初めて“2人で”って誘われた時に気になる程度だった気持ちが一気に“好き”にのし上がった。幸い私の好きになった子は遊び目的みたいなこともなく、ちゃんと付き合って、ちゃんと段階を踏んで、そういう関係になった。

 特別だった。初めてのデートも告白も、手を繋ぐことも、キスも。それから身体の関係を持つことも。時間をかけて、じっくり……。

 確かに年とともに関係を持つ期間というハードルは下がった気がする。身体の関係を持つ特別感は若い頃よりなくなってつき合えば“あたり前”のことになった。さすがにワンナイトはないけど、30過ぎた大人の恋愛では勿体ぶるものでもなくなってきた。

 私にとっては、そうでも、今のこの子にとってはどうなんだろう。

「どうかした? 」

 どうやら深く考え込んでいたらしい。顔をのぞき込まれていた。

「あ、ごめんなさい。ちょっとぼーっとして」
「うん。じゃあさ、そろそろ違うコミュニケーションにうつっていい? 」
「え、違うコミュニケーションって、むぐっ」

 あっという間に私の口には彼の唇が押し当てられていて言葉の続きはなかった。

 2秒ほどで唇を離し、私の顔を窺う。キラキラした子犬のような瞳で、どう?とばかり微笑んだ。
 同意を求めているんだと思う。この先に進むための同意を――。

 頭の中がぐるぐるする。
 まだ早くない?でも、勿体ぶるものじゃないし、同い年、もしくは上。そのあたりの年齢の男性とならどうしただろう。罪悪感、何だろう、この気持ち。いいのかなって……。