まだ青い彼

 シンプルなホテルの中、何となくリラックスできるくらい身支度を済ませると、彼はベッドに腰掛けた。私は彼に促されるまま向かい合う位置でソファに腰を下ろした。

 緊張する。気まずいし、怖い気持ちもある。何を話していいか……きょろ、と目を泳がせた瞬間彼が先に口を開いた。

「大人ってさ、セックスから始まる恋もあんの? 」

 ぶっ、と吹き出してしまって彼を見据える。いきなり、何!?

「はぁ、何!? 」
「はは。大人は付き合う前にやるのがオーソドックスって聞いたもんだから。付き合って直ぐとか、順序逆とか。わりと学生って手順踏むじゃん。記念日ーとか、旅行とか。そういうのすっ飛ばすのかなって。ほら、今日も初デートでホテルだし! 」
「オーソドックスなわけないでしょう! 今日だってあなたが! 」

 カッとなって握りこぶしかかげると彼はゲラゲラ笑った。

「はー、冗談だって。『大人の恋』っての求めてんのかと思って。だって、3か月で結婚とかありえんでしょ。そこに身体の関係も何もかも詰め込んだらそんなスパンだよなって。……結婚、したいって聞いてるもんだからこっちもそれなりに考えていかなきゃな」

 とか言いながらからかうように笑うことにムッとする。

「バカにしてるでしょ」
「いーえ。してません」

 今度はわざとキリっとした顔をして見せた。

「絶対してる」
「はは、どうだろ。そろそろ緊張溶けた? なら話、しよっか」

 こてんと首を傾げて微笑むと私の手を取った。ちょうどいい人肌の温度に、心がふわっと安らぐ。緊張してるの気づかれていたのが恥ずかしいし、その緊張を年下に気遣われていたたまれない。

「話を……」
「うん。お互いのこと何も知らないもん」

 それでOKしたのは何でよ。告白した私が言えるものじゃないから黙ってるけどさ。