まだ青い彼

()()親戚の子か。こんばんは。いつも、えーっとお姉さんにお世話になっています」

 いっ、何で橘さん挨拶なんか。焦るけど、言葉が出てこない。まずい、親戚じゃないことは言ったけど、彼が食いついて否定したらどうしよう。
「……こんばんは。こちらこそいつもお世話になってます」
 無難な受け答えでホッとしたのもつかの間。橘さんはわずかに目を見開き、すぐにまた笑顔を作った。七瀬くんもにっこりと笑顔を返す。講師のバイトで接客は慣れているのだろうか。こちらはどちらかが余計なことを言わないかひやひやする。

「ん。じゃあ、またな東谷」
「はい。お疲れさまでした橘さん、また」

 橘さんの背中を見送ると何か言いたそうな目で七瀬広睦が私の顔をのぞき込んでいた。

「あ、えっと……お待たせ? 」
「うーん……俺はいつから親戚になったのか、ってことと」
「ごめん。電車で一緒にいるのを見られていて他の人が親戚って勘違いしたのをそのまま……」
 パンっと顔の前で手を合わせて謝罪する。
 
 一応否定はしたけど、この関係をどう説明していいかわからないし、そもそもいちいち会社の人に説明しなきゃならないのかってハナシだ。
 
「ふうん。で、その電車で一緒にいた()()の俺が()()なんて言われるほど話題にあがったってことは……まぁ、悪くはない気分だけど、実際どうなの? 」
「どう? えっと、すっごいイケメンだって。やっぱり目立つんだよ。はは、会社の若い子たちも言ってたよ。新卒とかならあなたとはほとんど年がかわらないもんね」
「そう」

 褒めたつもりだけど、この子には何も響かず、むしろ不機嫌になってしまった。スタスタと歩き始めるから、私も慌てて早足でついて行った。