まだ青い彼

 三宅くんは私の反応が微妙だったのを誤解したらしい。『美人』の方を説明し始めた。
「東谷、美人だよ。今まで生きてきたら直接言われなくても周りの反応とか態度とかで自分の位置わかるだろう。気づかなかったのかよ」
「……え、そこ掘り下げてくれるの? ふふ、そんなモテなかったし全然……」
「思い出してみろよ」
「え……? 」

 思い出す?
 意味がわからず三宅くんの方を見つめると、すっと自分を指さした。それから視線を動かし、その先にいる人を指さした。橘さんだった。いるはずのない人で驚く。橘さんは私たちに気が付くと微笑み、こちらへやってきた。

「橘さんも来られたんですね! 」
「ああ。そうそう。昨日から出張で、土曜にこっちで法事」
「なんすか、その俺の送別会はついでみたいな言い方は」
「はは、メインメイン、三宅くんメイン」
「適当っすね」

 仲がいい先輩の前だと途端に“後輩”になる三宅くんが微笑ましくて笑う。とはいえ私も橘さんの前では気持ちだけ若く……いや、未熟な女の子みたいになってしまう自覚がある。20代の出会った頃に戻る。こういう時だけだけど。

「相変わらず、仲いいんだな、お前ら」
「まぁ、もうお別れですからねぇ。あ、やきもちっすか」
「ちょーっと、何バカなことを言ってるのよ! 」

 ただのジョークなのについ反応してしまった。
 橘さんはふっと三宅くんをあしらうように余裕の笑みを浮かべ、私に顔を向けると
「かもね」
 と言った。
 冗談だとわかっているのに全身の血が逆流するようにカッと顔が熱くなった。

「さっき。東谷の親戚に会って。大学生だっけ? めっちゃくちゃイケメンなんすよ。めっちゃくちゃ。まぁ、東谷も美人だしなって言ってたんですけど、信じなくて。ね、東谷美人ですよね、橘さん」
「え、ああ」
 橘さんは、目を見開き、口を覆った。わずかに顔が赤かった。