まだ青い彼

 ――金曜日が来てしまった。

『お泊り』って随分可愛い言い方で吹き出してしまったけど、すぐに真顔に戻った。
 男性と泊まるという意味がわからないわけがない。そういう意味だろうけど、早くない?と思ったり、付き合ってないのに?と思ったり、でもそんな勿体ぶるものでもないしな、などと感情のふり幅が忙しい。

 ゆるり首を振った。
 そんなことにはならない。だって、私は彼を説得するのだから。そう決心して家を出る。職場では一切考えないよう業務に集中した。そう、私の今のメイン柱は仕事なのだ。だから私は、転んだりしない。


 就業時間が終わり、片付けを始めた頃、三宅くんが尋ねて来た。

「東谷、終わった? 」
「うん。もう出れるよ。どうかした? 」
「や、一緒に行こうかなーって」
「あら、主役と一緒に行けるの、私」

 茶化すと三宅くんが苦笑いする。

「誰に声かけてるかわかんねぇし、変に下の奴声かけたら気使わしてパワハラにならねぇ? 」
「はは、考えすぎだって」
「でもさぁ、先輩に声かけたら金出してほしくて誘うみたいだし」
「まぁ、考えすぎかもしれないけど気持ちはわかる」
「なぁ、中堅って難しい年になったよ。同期が楽だわ、同期が」
「ん、そうだね。じゃあ、行こっか」

 三宅くんと連れ立って店へ向かった。道々いろんな話をする。

「向こうも誰か同期いるの? 」
「ああ、東谷も新卒の研修で会ったことある人とか。話したことはないかもしれないけど」
「そっか。新卒の研修こっちだったもんね。って何年前よ」
「そだよ、その何年ぶりーにあった人とこれからやってく。何人かは辞めて、何人かは出世して。もう結婚して子供がいてって……ああ、育休中の人も戻ってくるって言ってたかな」
「そうだねー、そんな年だもんね。早い早い」
「しんみりすんなって」
「しんみりする日でしょうが、今日は」
「……そうだった」

 そう、こうやって同期の三宅くんがいなくなるのも私からしたら変わりゆく時間の流れの一つだ。