まだ青い彼

 自分が常識人であることにバカをみてる気がするけど……。

 電車の時間だってずらせばいいのにいつも通り。だって、大人なんだから自分の撒いた種くらい何とかしなきゃと思う。……大人なんだから。

「おはよ。んな、あからさまにやな顔しなくていいじゃん」

 悪びれることなく笑顔で私の隣に立つ。私が嫌な顔してるの気づいても怯まない、変わったコ。

「ねえ、何が目的? 」

 不躾な質問をされるとどんな反応をするか表情から読み取ってやろうとわざと強めの言葉を使った。それを悟ったか、彼は

「え、お金と身体と、いやがらせ」

 そう言って屈託なく笑った。

「もう、ふざけないで」
「んじゃあ、俺の純粋な気持ちを疑うべきじゃないね」
 そう言われて返す言葉が無かった。だけど、本当に?

「まぁ、まずはデートするとこからでしょ」
「だからー、ねえ私はつき合う気ないってば」
「違う、違う。間違ってるよ、それ。()()()()()()()()。俺はね」
「ちょ、あのねえ」
「まさか、そんな酷いことしないよねぇ、いたいけな青年をその気にさせるだけさせて捨てるとか。あ、落とすのが趣味とか? 」
「ちょっと、声大きいって。誤解を招くような事言わないで。同年代かと勘違いしたのは悪かったけど……。そもそも惚れるような事してないでしょ」
「…………さあ、十分だと思うけど」

 告白されたら好きになるってこと?まぁ、高校生とか学生ならある……?ないか。この子に限って。だって告白なんて何回もされてきたはずだもの……。

「とにかく、私は……」
「さあ、ここで縋ってみようか? 会社の最寄り駅だし、同じ会社の人、この車両に乗ってるかもしれないね、MKHD事業本部の東谷さん」
 私の会社名を言ってにっこり笑う姿に、身体が強張ってしまった。

「え……何で知って……」
「……社員証。見えてるよ」
「あ……」

 もうすぐ着くからとカバンの上部に出していたものが見えたらしい。