まだ青い彼

 ――彼に声をかけると決めてから、どう声をかけるか考えあぐねていた。

 いい年して、という気持ちがブレーキをかける。電車で声をかけられて結婚した人っているのかな。どうやって始めるのだろう。全くの赤の他人なわけだし、最初に自己紹介した方がいい?

 何か前例はないかとネット検索すると同じような悩みが投稿されていた。

 【毎朝電車で見かける男性にひとめぼれをし、告白しよう思います。どのように思いを伝えればいいですか?】

 お、あるじゃない。回答のコメントがたくさんついていた。

 ・自分、これされたことある。怖くて次の日から電車変えた。
 ・きもっ、何で同じ車両乗ってるだけで好意寄せられなきゃならないの。
 ・ワンチャンあると思ってる所がこわい。
 ・特別美人でもないんでしょやめといたら
 ・高校生の時、他校から手紙貰ったことある。若いから許された行為
 ・忙しい出勤時に声かけるのだけはやめた方がいい。無になりたい時間だよ
 ・自分がきもいおじに声かけられたらどう思うか、逆の立場でかんがえてみ
 ・私は今の主人とは社内ならぬ車内恋愛です(笑)あの時勇気出してよかったなぁと思います。もう、30年以上も前の話ですが。

 ズーン、と心が沈んだ。怖い……そっか、確かに。若くもない女……。はぁ、とため息を吐いた。そりゃそうか……。

 【電車で毎朝同じ車両に乗る女性とよく目が合います。これって脈ありですよね?】

 こちらの質問にはもっと辛辣だった。

 ・きもいおっさんが見てくるから警戒してるだけじゃボケ
 ・あたまお花畑ですか
 ・どうやったらそんな発想になるの
 ・鏡見ろ。もう夜の窓ガラスでもいいわ、見とけ
 ・ほんと無理
 ・こういうのがいるから電車乗りたくない

 ……ああ、もう、やめておくのが賢明か。そう結論出すしかなかった。