電子の歌姫は今宵も言葉を紡ぐ【完】

ドドドドッといつもだったら聞かないような速さの鼓動が皮膚越しに伝わってくる。



「でも⋯⋯私は今日、一歩を踏み出すと自分に誓いました。だから⋯⋯聴いてくれると、嬉しいです」



もう、ねいろだってバレたってなんだっていい。

今はただ⋯⋯歌えばいいんだ。

マイクをすっと上げて、スピーカーからイントロが流れるのを待つ。

だけど、イントロはいつになっても流れ始めなかった。

すると、スタッフらしき生徒が走ってきて、私にそっと伝えてくれた。



「すみません⋯⋯! 今ちょうど、スピーカーが故障してしまって⋯⋯!」



えぇっ⋯⋯!? 今になって、故障しちゃったのっ⋯⋯?

でも、ここでスタッフさんを責めたって、どうにもならないよね。

⋯⋯こうなったら、アカペラでやるしかない。



「大丈夫、です。⋯⋯アカペラでやります」



もう一度マイクを顔の前まで持ってきて、歌い始める。



「___夜空を駆ける箒星、またたく間に消える流れ星」



さっきまでのパフォーマンスとは変わって、会場全体が静かになったのがこっちまで伝わってくる。

大丈夫⋯⋯歌は味方。私の想いを伝えてくれる。