電子の歌姫は今宵も言葉を紡ぐ【完】

何かを踏み出そうとしている中での葛藤⋯⋯まさに、今の私かもしれない。



「この曲を聞いて、何かに対して一歩を踏み出せたのなら嬉しいです!」



そう言った紡くんと、一瞬だけ⋯⋯本当に、ほんの一瞬だけ目が合ったような気がした。

きっと私の勘違いだと思うけど。

⋯⋯音楽って、こんなにも人の心を動かすことができるんだ⋯⋯。

さっきまで不安に思っていた私が嘘みたい。

今は、不安だなんて思っていない。むしろ、誰かに私の歌を聞いてもらいたいって思っている。



「⋯⋯玲香」

「ん? どうしたの、千星」

「私⋯⋯自由ステージ、応募してくる。受付って、どこにあるのかな⋯⋯?」

「ふふっ。あたしもついていくから大丈夫よ。行きましょ!」

「うんっ!」



私の足と心が、羽のように軽くなっていく。

玲香の後を追って、私は受付の場所へと向かい始めた。